藤中三兄弟の三男・颯志がV1デビュー。兄弟対決もリーグ後半戦の見どころに。

藤中三兄弟がV1に揃った

2021-22V.LEAGUE DIVISION1 (V1)は、1月16日にレギュラーラウンドの前半戦(18試合)が終了。次週から後半戦(18試合)が始まるが、年明けの1月8日から、今年4月に入団が内定している選手たちが初々しいプレーを披露している。

その1人、VC長野トライデンツの藤中颯志は、V1で活躍する藤中謙也(サントリー/28歳)、藤中優斗(ジェイテクト/25歳)の弟だ。スタメンリベロとして、1月8日の大分三好戦から4試合連続でフル出場。デビュー戦のスタートこそ、山田滉太(大分三好)の強烈なサーブを返球できずV1の洗礼を受けたが、気持ちを立て直してサーブレシーブ成功率64.7%をマークしたほか、ディグやつなぎでもデビュー戦とは思えない安定感を発揮してチームの今期初勝利に貢献した。4試合トータルでもサーブレシーブ成功率は62.9%と、上々の滑り出しを見せている。

「常に2人の兄のプレーや、活躍する姿を見続けてきたので、同じ舞台でバレーボールができることが嬉しい」と素直に喜ぶ一方、トップリーグで活躍することの難しさを肌で感じて、「改めて2人の兄を尊敬し直している」と言う。

謙也の身長は188cm、優斗は182cm。どちらもアウトサイドヒッターで、入団1年目のシーズンに最優秀新人賞を受賞している。兄弟の中でもっとも小柄な颯志は、大学時代にアウトサイドヒッターからリベロに転向したが、プレーの質や冷静に状況を判断する力は兄たちに引けを取らない。チームが得点した際に自然と出るガッツポーズとくったくのない笑顔も颯志の魅力だ。

「同じ舞台でプレーするからには兄とか弟とか関係なく、2人の存在を越えられるような選手になりたい」と、しっかり先を見据える三男の参戦で、兄弟対決がレギュラーラウンド後半戦の見どころの一つになりそうだ。

・2月19日、20日 サントリー(謙也)対 ジェイテクト(優斗)ウィングアリーナ刈谷
・2月26日、27日 サントリー(謙也)対 VC長野(颯志)スカイアリーナ
・3月12日、13日 ジェイテクト(優斗)対 VC長野(颯志)ジェイテクトアリーナ奈良

6年前の兄弟対談の時の画像

6年前、石川祐希(ミラノ)、小野寺太志(JT広島)ら有望選手が揃った選抜合宿に、謙也と優斗も選出された。本誌(Vol.2)で兄弟対談を行った際に謙也は「中学以降、バレーに本格的に取り組んでからは、優斗のプレーをあまり見ていない」と話していたが、颯志についても同じだろう。兄が道を切り開き、弟たちはその背中を追ってきた。三兄弟が本気の戦いの中で見せる姿から、兄弟に通じるものや、それぞれが放つ個性を感じ取ってほしい。

藤中颯志
ふじなかそうし/1999年12月2日、山口県生まれ、22歳/身長177cm/最高到達点325cm/宇部商業高校→ 専修大学在学中

(文・金子裕美)

レセプションで及第点とも言える数字を残した藤中颯志

混戦のV1男子。昨季7位のウルフドッグス名古屋が台風の目に!

 10月17日(土)に幕を開けたVリーグ(V1男子)は、レギュラーラウンド(4回戦総当たり)を熱戦中。現在、全チームが10試合、同一カードを2試合ずつ戦い、下記のような順位となっている。試合が1週空いて、どのような調整が行われたのか。11月27日(金)・28日(土)に行われる次戦が楽しみだ。

1位 ウルフドッグス名古屋 8勝2敗 23ポイント 2.17% 
2位 パナソニックパンサーズ 8勝2敗 23ポイント 2.00%
3位 サントリーサンバーズ 8勝2敗 23ポイント 1.80%
4位 JTサンダーズ広島 7勝3敗 21ポイント
5位 ジェイテクトSTINGS 7勝3敗 18ポイント
6位 堺ブレイザーズ 5勝5敗 16ポイント
7位 東レアローズ 5勝5敗 14ポイント
8位 FC東京 2勝8敗
9位 VC長野 0勝10敗 2ポイント 0.27%
10位 大分三好ヴァイセアドラー 0勝10敗 2ポイント 0.17%
※勝敗が同じ場合、ポイント、セット率により順位を決定(11月15日終了時)

クレクの働きで取り戻した「自信」

 昨シーズンの上位チームを抑えてトップに立つウルフドッグス名古屋(以下、WD名古屋)は、精度の高いトータルディフェンスとオポジットの攻撃力が特色のチームだ。

 クリスティアンソン・アンデッシュ前監督が、チームコンセプトに基づいたチームバレーを根づかせて、2015/16シーズン(当時は豊田合成)に初優勝。その後も準優勝2回と強豪チームに成長させた。その間に、ティリカイネン・トミー監督を迎えて、二人三脚でチーム強化に取り組んできたが、2018-19シーズンを最後にアンデッシュ前監督が勇退。新時代を担うであろう、学生時代に国際大会を経験している4選手(高梨健太、永露元稀、小川智大、勝岡将斗)が入団し、トミー監督のもと、コーポレートクラブハイブリッドチーム「ウルフドッグス名古屋」として新たな一歩を踏み出した昨シーズンだったが、7位に終わった。新体育館が完成した今シーズン、なんとしても結果を出したい、という思いは、世界屈指の主砲、クレク・バルトシュ(ポーランド代表/オポジット)の獲得に表れている。入国から14日間、待機生活を送り、開幕の3日前にチームに合流。急ごしらえのチームで開幕週はサントリーに連敗したが、翌週から負け知らずの8連勝でトップに躍り出た。

守備面で存在感を発揮するリベロ小川智大。

 その日の会見で、アンデッシュ前監督時代から、トータルディフェンスの要として厚い信頼を得ている近裕崇(ミドルブロッカー/キャプテン)は、「ブロックでボールが抜けたり、ボールをタッチしたりした時に、(リベロが)いるよね、という感覚が昨季よりも強い気がする」と、手応えを口にした。

「昨シーズンはトミー監督が思い描いているバレーを体現できなかったのですが、今年は練習を積んで、練習の時からそれができてきている実感がありました。また、クレク選手がリーダーシップをとって、チームに自信を与えてくれています。それもチームが好調な要因だと思います」

 そう話すのは、今シーズン、スタメン起用されているリベロの小川智大だ。今年はスピンサーブへの対応と、サーブレシーブのフォーム改善に取り組んできたという。自分のこだわりを捨てて猛練習した成果が今、数字に表れて、サーブレシーブ成功率ランキングでトップ(76.3%/11月15日終了時)に立っている。サーブレシーブの場面では、セッターの攻撃プランに応じて、誰がレシーブするのがベストなのかを考え、(サーブレシーブを担当するアウトサイドの選手に)指示を出していると言うが、チームのサーブレシーブ成功率も現在1位(60.6%/11月15日終了時)で、ベンチの信頼を獲得している。

「(セッターが攻撃させたい選手に)できるだけフリーで打たせたいから」と小川。そのため、後衛のアウトサイドの選手と小川がレシーブに入るという選択をして「パイプが弱くなるケースもある」と言う。そうした駆け引きをコート上の選手たちがコミュニケーションを取りながら、場面に応じてよりよい選択をし、得点に結びつく行動をとる、という文化が根づいているのがWD名古屋の強みだ。キャプテン近も、「(攻撃の場面では)僕に相手のマークがつくことが第一。他の選手が助かるから」と献身的なプレーに徹する。その背中が道標となってチームは1つになりつつある。

コート上で表情豊かにプレーするアウトサイド高梨健太。

 さらにクレクが、総得点ランキング1位(272点/11月15日終了時)の働きにとどまらず、コート外でも積極的に選手にかかわることにより、チームは自信を取り戻している。エースに成長中の高梨健太や、サントリーの柳田将洋とともに春高バレーを沸かせた山田脩造(共にアウトサイド)も、非凡な能力を発揮していて頼もしい。

 レギュラーラウンドはまだ序盤だが、今シーズン、WD名古屋が台風の目となって、順位争いに大きな影響を与えそうな様相。本日のナイトゲームを含め、今週末以降の戦いに大いに注目したい。

【11月27日(金)・28日(土)の対戦カード】
大阪(大阪市)サントリー vs JT広島
【11月28日(土)・29日(日)の対戦カード】
愛知(稲沢市)WD名古屋 vs 大分三好
長野(松本市)VC長野 vs パナソニック
静岡(静岡市)東レ vs 堺 ジェイテクト vs FC東京

文・金子裕美

「地元への恩返し」を胸に、高松卓矢が大分入り。

Vリーグ選手になって10年目を迎える節目の年に、高松卓矢(32歳)は大きな決断をした。2020-21シーズンはウルフドッグス名古屋(前回7位)を離れ、地元・大分県を本拠地とする、大分三好ヴァイセアドラー(前回9位)の一員として戦うことを決めたのだ。主軸選手の移籍を承諾したウルフドッグス名古屋の懐の深さにより、10月17日(土)に開幕を予定している2020-21 V.LEAGUE DIVISION1(V1)への注目度が高まっている。「コートに立てるうちに、育ててくれた地元への恩返しがしたかった」という高松に、移籍の経緯や今の気持ちを聞いた。

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