王者フランスとの戦いを自信と糧に、来季はさらなる飛躍を!

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 世界選手権(ポーランドとスロベニアの共同開催)で、決勝トーナメント Round of 16に出場した日本は、東京2020、2022ネーションズリーグの覇者であるフランスと対戦。2-3(17-25、25-21、24-26、25-22、16-18)で惜敗し、12位で大会を終了したが、来季を期待させる締めくくりとなった。

 第1セットこそフランスが得意とするミドルブロッカーを軸とした攻撃を許してしまい、一方的なゲームとなったが、2セット目以降はしぶとくサーブで揺さぶりをかけ、フランスに思い通りのプレーをさせない状況を作り出した。

 立役者はこの試合31得点(内、アタックは28得点)と大活躍の西田有志だ。試合後のインタビューでフランスのミドル、シヌニエズ(背番号1)も脱帽していたが、とにかくブロックにかからない。すり抜ける。そのもどかしさも、フランスの歯車を狂わせる要因となり、ファイナルセットもデュースの激戦となった。

 16-16。まさにどちらが勝ってもおかしくない状況下で、一流の証を見せたのはフランスの要、ヌガペト(OH)だった。マッチポイントにつながるサーブレシーブは、「クイック、いけるぞ」と言わんばかりの好返球。これをルゴフ(MB)が決めて16-17。日本としてはなんとしてもサイドアウトを取らなければいけない場面で、西田のスパイクがブロックに当たり、そのボールがつながってヌガペトのもとへ。するとスタンディングジャンプにもかかわらず、ブロックを交わして超インナーの誰もいない場所へスパイクを打ち込まれてゲームセットとなった。

 強豪といわれるチームには、こうした勝負を決する場面で勝ち切る力がある。ネーションズリーグのブラジル戦でも日本は競り合ったが、終盤の肝心な場面で点を取れずにセットを落とした。競り合いを勝ち切るには「トーナメントの緊迫する試合で経験を積むことが必要だ」と石川祐希は話していたが、まさにこのフランス戦はそれに匹敵する試合ではなかったか。

 目標としていたベスト8には届かなかったが、エースでありチームリーダーの石川がベストコンディションではない中でも、手応えを感じるゲーム内容で締めくくれたことは収穫だった。この戦いで得たものを自信に、見えた課題を糧にして、来季ではさらなる飛躍を期待したい。

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フランス戦のスタメンはOH:石川祐希・髙橋藍、MB:山内晶大・小野寺太志、OP:西田有志、S:関田誠大、L:山本智大。

個人成績は以下の通り。
・西田有志 OP 31得点
・石川祐希 OH 22得点
・髙橋藍 OH 11得点
・山内晶大 MB 10得点 
・小野寺太志 MB 2得点
・関田誠大 S 1得点
※OH:アウトサイドヒッター、MB:ミドルブロッカー、OP:オポジット、S:セッター、L:リベロ
※個人成績を訂正しました。(2022年9月13日)

文責:金子裕美

世界バレーが開幕。存在感が増している髙橋藍の積極的なプレーとリーダーシップに期待

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 世界のトップ24チームが参加するバレーボールの男子世界選手権(ポーランドとスロベニアの共同開催)が8月26日に開幕した。リュブリャナ(スロベニア)で初戦を迎えた日本は、カタールを3-0(25-20、25-18、25-15)で下して白星スタートを切った。

 1次ラウンドは4チームによる1回戦総当たりで、日本は28日(日本時間21時開始)にブラジル、30日(日本時間21時開始)にキューバと対戦する。

 カタール戦のスタメンはOH:髙橋藍・大塚達宣、MB:山内晶大・小野寺太志、OP:西田有志、S:関田誠大、L:山本智大。

 個人成績は以下の通り。
・西田有志 OP 17得点
・髙橋藍 OH 11得点
・山内晶大 MB 8得点 
・小野寺太志 MB 8得点
・大塚達宣 OP 6得点
・石川祐希 OH 4得点
・宮浦健人 OP 1得点

※OH:アウトサイドヒッター、MB:ミドルブロッカー、OP:オポジット、S:セッター、L:リベロ

 左足首の負傷により治療、リハビリに専念していた石川祐希は、ベンチスタートで戦列復帰を果たしたものの、実戦から離れていたため感触を確かめながらのプレーとなった。復調が待たれるなか、ポイントゲッターの西田有志や司令塔の関田誠大が実力を発揮し、日本はストレート勝ちを収めたが、ひときわ印象に残ったのは髙橋藍の存在感だ。大舞台の初戦に動じるどころか、チームを支える頼もしさを感じた。

 2020年にフィリップ・ブラン監督と出会い、昨シーズンまでは「スパイクにしても、サーブレシーブにしても注意されることばかり。サーブレシーブで球をはじくたびに怒られていた」と言うが、へこむどころか、厳しさは自分への期待の裏返しと受け取って前向きに努力してきた。今シーズンは監督の期待が確信に変わり、「プレーで挑戦することと、リーダーシップが求められている」と胸を張る。

 強豪ブラジルとの戦いで髙橋がどんなパフォーマンスを見せるのか。プレーだけでなく、コート上のたたずまいなど戦う姿勢にも注目したい。

個性派揃い!バレーボールネーションズリーグ<第1週>日本代表

VNL第1週は石川祐希を含めた14名を選出。ブランジャパンの先陣を切る

 FIVBバレーボールネーションズリーグ2022 予選ラウンド第1週 ブラジル大会(以下VNL)が、6月7日(火)から12日(日)までブラジリアで開催される。日本代表チームは、パドバ(イタリア)での事前合宿を経て、VNLが行われるブラジリアに移動。ネーションズリーグ開幕までの合宿期間ではブラジル代表チームとの練習試合も予定されており、チームの連携を深めて大会に臨む。

 チームを率いるフィリップ・ブラン監督は、監督就任当初から「2022年度は東京五輪代表メンバーが中心になる」と明言していたが、今回のメンバーにはキャプテンの石川祐希(ミラノ)をはじめ8名が選出された。そのうち、石川、西田有志(ビーボ・バレンティア)、関田誠大(クプルム・ルビン)、髙橋藍(日本体育大学/パドバ)が2021-22シーズンを海外のリーグで過ごしている。VNLはその成果を存分に発揮する大会となるだろう。また、ブラン監督は、海外組に加えてリベロ山本智大(堺)にもリーダー的な役割を期待しており、VNLはこの5選手を中心に戦いが繰り広げられていくことになりそうだ。

 もちろん小野寺太志(JT)、山内晶大(パナソニック)、大塚達宣(早稲田大学)のさらなる進化にも期待がかかる。スタメン定着に向けて自身の持ち味を自覚し、チームの勝利に貢献したいところだ。

 東京五輪代表以外では、2021-22Vリーグでプロック賞、ベスト6、フェアプレー賞を受賞。攻撃にも自信をつけた髙橋健太郎(東レ)と、同リーグで2年連続のサーブレシーブ賞を受賞。ベストリベロにも輝くなど着実に力をつけている小川智大(ウルフドッグス名古屋)が、昨年に続きVNL代表入りを果たした。

 髙橋は代表歴8年目にして、新たな気持ちでシーズンを迎えている。早くから活躍が期待されていたが、その能力を十二分に発揮することができず、東京五輪代表にも選出されなかった。バレーボールから離れることを考えた時期もあったというが、チームの手厚いバックアップのもと、2021-22Vリーグでは充実したシーズンを送り、今に至っている。その自信を力に変えることができれば、小野寺、山内を脅かす存在になるだろう。

 パリ五輪出場を目標に掲げる小川は覚悟をもって臨んでおり、「前回とは違う自分を見せたい」と話していた。振り返れば、昨年は反応の良いプレーで世界のバレーボールファンを魅了したが、出番は少なかった。今年はチームが目指すバレーの実現にこだわり、その1ピースになる、と心に決めている。もう一人のリベロ山本の能力を誰よりもわかっている小川の、真摯な挑戦を見届けたい。

 宮浦健人(ジェイテクト)は、昨年、東京五輪後に行われたアジア選手権に続く国際大会出場となる。世代別の代表経験が豊富な選手だけに、今頃合宿地でわくわくしていることだろう。同じポジションの西田とは高校時代から競い合ってきた仲だが、高校を卒業後、宮浦は大学へ。1学年下の西田はVリーグへ。道が分かれたため、同じチームでの国際大会出場は2017年のアジアユース以来となる。刺激を受け合い、成長する姿を見せてくれるに違いない。

 今回、シニアの国際大会に初めて名を連ねた富田将馬(東レ)、永露元稀(ウルフドッグス名古屋)、村山豪(ジェイテクト)は、いずれもキラリと光る個性の持ち主だ。

 富田は東山高校の後輩、高橋藍に勝るとも劣らないオールラウンダーで、2021-22Vリーグでは攻守でその能力を遺憾なく発揮した(レシーブ賞を受賞)。富田の強みは、状況に応じてさまざまな工夫ができるところにある。世界を相手にしても多彩な技が通用するのか、注目したい。

 永露は待望の大型セッターであり、ブロックやサーブでもチームに貢献できる強みがある。2021年度天皇杯や2021-22Vリーグでそれを実証し、セッターとしての能力を上げていくフェーズに入った。「トスのスピードや精度の向上に努めている」と言う192cmの永露が、チームに入るとどのような化学変化が起きるのか、興味深い。

 村山は、アウトサイドもこなせる器用さと、高校、大学を通してトップチームで磨きをかけた洞察力が武器の選手だ。コートに立つ前からしっかり準備ができていて、得点チャンスを逃さない。2021-22Vリーグでは新人賞を受賞した。日本チームに新風を吹き込む可能性を秘めていている逸材だけに、代表デビューが待ち遠しい。

 世界のトップ16チームが出場するVNL2022の予選ラウンドは、各チームが12試合を戦い、その結果に基づき順位を決定する。日本は6月 8日(水)が初戦となり、オランダと対戦する。2年後のパリ五輪に向けて走り出したブランジャパンの、まずは初戦に注目だ。

【VNL予選ラウンド第1週 ブラジル大会日程】
6月8日(水)現地 18:00 日本 翌6:00 vsオランダ
6月9日(木)現地 15:00 日本 翌3:00 vs中国
6月10日(金)現地 18:00 日本 翌6:00 vsアメリカ
6月12日(日)現地 13:00 日本 翌1:00 vsイラン
※6月7日(火)、11日(土)は日本の試合なし
※BS-TBSにて日本戦全試合放送
【VNL 第1週 男子日本代表メンバー】
1.西田有志
にしだ ゆうじ
所属/ビーボ・バレンティア(イタリア)
ポジション/オポジット
出身地/三重県
出身校/海星高校(三重)
年齢/22歳
身長/187cm
最高到達点(スパイク)346cm
最高到達点(ブロック)330cm
☆東京五輪代表

2 小野寺 太志
おのでら たいし
所属/JTサンダーズ広島
ポジション/ミドルブロッカー
出身地/宮城県
出身校/東北高校(宮城)→東海大学
年齢/26歳
身長/200cm
最高到達点(スパイク)343cm
最高到達点(ブロック)330cm
☆東京五輪代表

5.大塚 達宣
おおつか たつのり
所属/早稲田大学4年
ポジション/アウトサイドヒッター
出身地/大阪府
出身校/洛南高校(京都)
年齢/21歳
身長/194cm
最高到達点(スパイク)338cm
最高到達点(ブロック)325cm
☆東京五輪代表

6 山内 晶大
やまうち あきひろ
所属/パナソニックパンサーズ
ポジション/ミドルブロッカー
出身地/愛知県
出身校/名古屋市立工芸高校(愛知)→愛知学院大学
年齢/28歳
身長/204cm
最高到達点(スパイク)354cm
最高到達点(ブロック)335cm
☆東京五輪代表

8 関田 誠大
せきた まさひろ
所属/クプルム・ルビン(ポーランド)
ポジション/セッター
出身地/東京都
出身校/東洋高校(東京)→中央大学
年齢/28歳
身長/175cm
最高到達点(スパイク)324cm
最高到達点(ブロック)305cm
☆東京五輪代表

10 髙橋 健太郎
たかはし けんたろう
所属/東レアローズ
ポジション/ミドルブロッカー
出身地/山形県
出身校/米沢中央高校(山形)→筑波大学
年齢/27歳
身長/202cm
最高到達点(スパイク)361cm
最高到達点(ブロック)350cm

11 富田 将馬
とみた しょうま
所属/東レアローズ
ポジション/アウトサイドヒッター
出身地/愛知県
出身校/東山高校(京都)→中央大学
年齢/24歳
身長/190cm
最高到達点(スパイク)345cm
最高到達点(ブロック)320cm

12 髙橋 藍
たかはし らん
所属/日本体育大学3年
ポジション/アウトサイドヒッター
出身地/京都府
出身校/東山高校(京都)
年齢/20歳
身長/188cm
最高到達点(スパイク)343cm
最高到達点(ブロック)315cm
☆東京五輪代表

13 小川 智大
おがわ ともひろ
所属/ウルフドッグス名古屋
ポジション/リベロ
出身地/神奈川県
出身校/川崎市立橘高校(神奈川)→明治大学
年齢/25歳
身長/176cm
最高到達点(スパイク)312cm
最高到達点(ブロック)290cm

14 石川 祐希
いしかわ ゆうき
所属/パワーバレー・ミラノ(イタリア)
ポジション/アウトサイドヒッター
出身地/愛知県
出身校/星城高校(愛知)→中央大学
年齢/26歳
身長/191cm
最高到達点(スパイク)351cm
最高到達点(ブロック)327cm
☆東京五輪代表

16.宮浦 健人
みやうら けんと
所属/ジェイテクトSTINGS
ポジション/オポジット
出身地/熊本県
出身校/鎮西高校(熊本)→早稲田大学
年齢/23歳
身長/190cm
最高到達点(スパイク)347cm
最高到達点(ブロック)320cm

20.山本 智大
やまもと ともひろ
所属/堺ブレイザーズ
ポジション/リベロ
出身地/北海道
出身校/とわの森三愛高校(北海道)→日本体育大学
年齢/27歳
身長/171cm
最高到達点(スパイク)301cm
最高到達点(ブロック)299cm
☆東京五輪代表

21.永露 元稀
えいろ もとき
所属/ウルフドッグス名古屋
ポジション/セッター
出身地/福岡県
出身校/東福岡高校(福岡)→東海大学
年齢/25歳
身長/192cm
最高到達点(スパイク)335cm
最高到達点(ブロック)325cm

26 村山 豪
むらやま ごう
所属/ジェイテクトSTINGS
ポジション/ミドルブロッカー
出身地/東京都
出身校/駿台学園高校(東京)→早稲田大学
年齢/23歳
身長/192cm
最高到達点(スパイク)341cm
最高到達点(ブロック)317cm

【アジア選手権】日本が準決勝進出。途中出場の大宅、大竹が流れを変えた!

男子のアジア選手権は、17日に千葉ポートアリーナ他で順位決定予備戦2日目を行い、日本はオーストラリアに3-0(25-23、25-17、25-23)で勝利して勝点を6とした。前日まで1位につけていた中国もカタールに3-2で勝利し勝点で並んだが、セット率差で日本がE組1位となり、18日に行われる準決勝はF組2位のチャイニーズタイペイと対戦する。

前日、中国に敗れた日本。果たして、気持ちを切り替えて臨むことができるのか。滑り出しが心配されたが、第1セット中盤まではミスが重なり、決して良い状態とは言えなかった。ベンチは2回目のテクニカルタイムアウトをオーストラリアに取られた時点で2枚替えを決断。セッター藤井(前衛)のポジションにオポジット大竹壱青を、オポジット宮浦健人(後衛)のポジションにセッター大宅真樹を入れた。

「中国戦では2枚替えでの起用もなく、スタッフから信頼を得られていない自分に苛立ちを感じた」という大宅は、このチャンスを絶対にものにする、という強い気持ちで臨んだという。その気持ちを結果に結びつけるために、自身に課したのが「丁寧にトスを上げること」と「チームに火をつけること」だ。自分一人の力では難しい後者の課題を実現するために、同期で頼れるエース石川祐希にトスを集めようと考えていた。小野寺太志の好サーブでブレイクのチャンスを作ると、大宅が打ちやすいトスを石川へ。この1点をきっかけに石川もギアを上げて、日本は6連続得点で逆転に成功した。その後もオーストラリアの追撃をしのぎ、第1セットを奪うと、第2セットは序盤からチーム力を発揮した。大宅、リベロ山本智大のディグが冴える。石川も攻撃だけでなく、サーブやセットアップでも地力を発揮。前衛ではミドルブロッカー李博が躍動し、日本は4連続得点と好スタートを切った。さらに中盤、リードを広げる機会が訪れた。小野寺同様、サーブ力に定評のある李が、サービスエースを含む好サーブで6連続得点に貢献。ブレイクのチャンスでは好調の大竹や石川が得点を重ねて日本はセットを連取した。

ミラクルなプレーでチームの勝利に貢献した大竹。中垣内監督は活躍を喜びながらも、「ミラクルでは安定しない。ロジカルなプレーを」と、さらなる成長を期待していた。

第3セットは中盤の4連続失点がひびき終盤まで接戦となったが、好守でチームを支える山本がここでも魅せた。23-23からオーストラリアの大砲、トーマス・エドガーの強烈なサーブをきっちりセッターに返し、小野寺のクイック攻撃でマッチポイント。その小野寺がサーブにまわり、山本の気迫がチームに乗り移ったかのように、李がエドガーの攻撃をシャットアウトして勝利をものにした場面は見応えがあった。一人ひとりが自信を取り戻し、自分の仕事を果たせるチームに戻っていた。

ゲームを作った大宅は「チームが勝利し、(自分にとっても)自信がもてる試合になったと思う」と振り返った。大竹も、自身の力を発揮できたことに充実感を味わっていた。アジアチャンピオンまであと2戦。2人に続き、出場機会が少ない大塚達宣、福山汰一、小川智大がコートに立つ機会は訪れるのか。準決勝のチャイニーズタイペイ戦ではそこにも注目し、チーム一丸となっての勝利に期待したい。

強打に強い山本智大。この試合でも真骨頂を発揮した。

【アジア選手権】中国に敗れた日本。準決勝進出はオーストラリア戦勝利が条件に。

男子のアジア選手権は、16日に千葉ポートアリーナ他で順位決定予備戦を行い、予選グループリーグ戦を3連勝で突破した日本(A組1位)は、中国(C組2位)と対戦。セットカウント1-3(19-25、29-27、21-25、19-25)で敗れて初の黒星を喫した。コンディション不良でベンチスタートだった石川祐希が、予選グループリーグ戦3日目にコートに立ち、インドに圧勝。アジアの強豪と対戦する順位決定予備戦での活躍に期待が高まったが、この日は個の力が噛み合わず、どのセットも中国に連続得点を許す苦しい展開で、日本は勝ち点を伸ばすことができなかった。

終わってみれば、サーブ(中国8得点/日本3得点)とブロック(中国17得点/日本1得点)による得点差が勝敗を分けた一戦だった。宮浦健人が「サーブが狙いどおりにいかず、リベロに集まってしまった」と話したように、日本はサーブで揺さぶることができず、逆に相手のサーブで守備を崩され、攻撃が単調になりがちに。石川は「中国の強みであるブロックで点を奪われ、相手を乗せる形になってしまった」と、反省を口にした。

チームは対戦相手のデータを収集、分析し、サーブレシーブの位置取りやサーブの狙いどころなど、戦術を選手と共有して試合に臨んでいるが、狙いどおりに展開できない場合はそのつど修正が必要になる。この日はベンチも含めて、有効な対応取れなかったことが課題として残る一戦となった。

順位決定予備戦では予選グループリーグ戦で当たったチームとは対戦せず、予選グループリーグ戦の対戦成績が持ち越されるため、17日に行われる日本(勝点3/2位)対オーストラリア(勝点2/4位)、中国(勝点4/1位)対カタール(勝点3/日本とはセット率差で現在3位)の結果により順位が決定し、上位2チームが18日に行われる準決勝に進む。どのチームにも準決勝進出のチャンスがあるため、難しい試合になることが予想されるが、次戦に向けて石川は、「全員がベストコンディション、ベストなメンタルで試合に臨んでくれるはず。オーストラリアもブロックが高いチームだが、(中国戦でうまくいかなかったところを)修正し、自分がリズムを作っていく」と、決意を口にした。チーム一丸となっての勝利に期待したい。

【アジア選手権】頼れる石川不在で、最年少高橋藍が覚醒。「チームは自分が引っ張る」

男子のアジア選手権は、13日に千葉ポートアリーナ他で予選グループリーグ戦2日目を行い、日本はバーレーンに3-1(23-25、25-17、25-23、25-16)で勝利し、2勝目をあげた。

前日のカタール戦から大きくメンバーを入れ替え、高梨健太(ウルフドッグス名古屋/アウトサイドヒッター)、高橋藍(日本体育大学2年/アウトサイドヒッター)、大竹壱青(パナソニック/オポジット)、福山汰一(ジェイテクト/ミドルブロッカー)、山内昌大(パナソニック/ミドルブロッカー)、大宅真樹(サントリー/セッター)、小川智大(ウルフドッグス名古屋/リベロ)という布陣で臨んだ日本。オリンピック代表を逃したメンバーは、このチャンスを生かして存在感を示したいところだったが、前日インドを破り、勢いに乗るバーレーンに苦しい戦いを強いられた。

多少サーブレシーブが乱れてもクイック攻撃を多用するバーレーンに対し、ブロックの的を絞りきれず、第1セットを競り負けた日本。第2セットに入ると、「頼れる石川選手はコートにいない。誰が決め手になる? 自分だろう…」そんな自問自答をしたという最年少の高橋が奮起してセットを取り返した。

これで勢いに乗るかと思われたが、第3セットは再び、思うように点差を広げることができない展開。ベンチはセット中盤で大竹を諦め、宮浦健人(ジェイテクト/オポジット)を投入。その宮浦がシャープなスパイクでサイドアウトを奪い、チームを勢いづけた。終盤は、コースをつく高橋の鋭いサーブや、福山に代わりコートに入った小野寺太志(JT広島/ミドルブロッカー)のクイック攻撃などで得点し、日本は粘るバーレーンを突き放してセットを連取した。

続く第4セットは、宮浦、小野寺を続投。さらにセッターを大宅から藤井(東レ)に、リベロを小川から山本(堺)に代えて地盤を固めた。すると、五輪で自信を深めた小野寺、藤井、山本が地力を発揮。藤井は声を出し、表情豊かにチームに活気をもたらす。小野寺はブロックでタッチを取りチャンスを作る。攻撃では巧みなモーションで相手ブロッカーを引きつけ、アウトサイドヒッターのパイプ攻撃を援護する。山本は得意のディグで相手の得点を阻む。前日、シニアデビューした宮浦も肩の力が抜けて、落ち着いていた。こうした数字に表れない力により次第に歯車がかみ合い始めた日本は、セット中盤で逆転に成功。その後も、この日、最多得点(26点)の高橋が攻撃だけでなくブロックやサーブでも点を奪い、危なげなくこのセットをものにして、日本は3-1で勝利した。試合後、高橋が発した「(決め手としての)責任を果たせてよかった」という言葉が頼もしかった。

【アジア選手権】次世代の高橋、大塚、宮浦らがスタメン出場。白星スタート

9月12日に、アジア男子選手権大会が千葉ポートアリーナ他で幕を開けた。日本代表は、中垣内祐一監督のもと、東京オリンピックに出場したメンバーを中心に、福山汰一(ジェイテクト/ミドルブロッカー)、大宅真樹(サントリー/セッター)、宮浦健人(ジェイテクト/オポジット)、大竹壱青(パナソニック/オポジット)、小川智大(ウルフドッグス名古屋/リベロ)を加えた14名で臨み、初戦のカタール戦は、背中、腰などに痛みのある石川祐希(ミラノ/アウトサイドヒッター)をベンチに温存しながらも、セットカウント3-0のストレート勝ちで白星発進した。

この日のスターティングメンバーは、五輪代表の高橋藍(日本体育大学2年/アウトサイドヒッター)、大塚達宣(早稲田大学3年/アウトサイドヒッター)、小野寺太志(JT広島/ミドルブロッカー)、李博(東レ/ミドルブロッカー)、藤井直伸(東レ/セッター)、山本智大(堺/リベロ)に、新メンバー宮浦健人を加えた布陣。中垣内監督は、11日の会見で五輪メンバーと入れ替わった2名のオポジットを注目ポイントにあげ、「アジアを相手にどこまでできるのか、しっかり見ていく」と話していたが、初戦に起用したのはシニア代表デビューとなる宮浦だった。

宮浦は、2017シーズンからアンダーエイジカテゴリー日本代表の中心選手として活躍。大学3年生で臨んだ2019ユニバーシアードでは高さのあるヨーロッパ勢を相手に戦い、自信をつけて、シニア入りに意欲を示してきた。そして今年、初のシニア日本代表に選ばれ、本大会のメンバーに選出された。シャープなスイングが持ち味。攻撃の幅が広く、サイドアウトを取ることには定評がある。この日のカタール戦でも緊張は見られたものの、積み上げてきた多くの経験を力に変えて、まずまずのスタートを切った。「コンディションは万全」という宮浦。これまでも実戦を踏んで力をつけてきた選手だけに、試合を重ねるごとに持ち味を発揮し、成長する姿を見せてほしい。

宮浦健人(22歳)
鎮西高校→早稲田大学→2021年4月より、ジェイテクトSTINGS
持ち味:シャープなスイング
「スパイクだけでなく、サーブも注目してほしい」
今大会の目標
「自分の力を出し切ること」

【アンダーエイジカテゴリー代表歴】
2017年/U-19アジア選手権・U-19世界選手権
2018年/U-20アジア選手権
2019年/ユニバーシアード競技大会(ナポリ)・U-23アジア選手権
※いずれもオポジットで出場。
宮浦(19)、大塚(5)、福山(9)、3人の共通点は指先の「W」。次戦以降も早稲田旋風に期待したい。

【TOKYO2020】ベスト8敗退も、3年後のパリに向けて確かな手応え

イランに勝利した後、石川を労う中垣内監督。

2008年の北京五輪以来、3大会ぶりにオリンピックの舞台に立った日本は、予選ラウンド最終戦でアジア1位のイランを破り、準々決勝に進出。準々決勝では、長きにわたり世界王者に君臨するプラジルにセットカウント0-3で敗れたものの、SNSで「男子バレーがおもしろい」などのコメントが飛び交う熱い戦いを演じた。もちろん選手は悔しさを噛み締めているだろうが、今大会を戦う中で、3年後のパリにつながる確かな手応えを得たことは間違いない。(写真提供:FIVB)

中垣内ジャパンは2017年に結成以来、5年間にわたり、懸命にデータを取り、分析して、世界と戦えるチームづくりを模索してきた。選手に求められたのは、より一層の主体性だ。チーム目標を人ごとではなく、自分ごととしてとらえて本気で取り組む姿勢なくして、自国開催のオリンピックに立ち向かうことはできないからだ。その雰囲気をいち早く察してプロに転向し、海外で武者修行する選択をした柳田将洋がキャプテンに任命された。そこに五輪経験者、福澤達哉が加わり、石川祐希や小野寺太志、西田有志ら、チームの主軸になる若手選手の個性を尊重しつつも、チームを束ねてきた。2019年に行われたW杯4位は、チームを統括する立場にある中垣内祐一監督をはじめ、すべてのスタッフと、チームの戦術をコート上で体現した選手たちの努力の結晶であり、東京五輪に向けて大きな弾みとなった。

守備からの攻撃参加が体に染み付いている高橋。そこも優れていることの一つ。

東京五輪が予定通りに昨年行われていれば、W杯メンバーを軸に代表選考が行われ、柳田、福澤も五輪代表に選ばれていたに違いない。1年延期となり、2024年に開催予定のパリ五輪も視野に入れたメンバー選考が色濃くなって、石川が新キャプテンに抜擢され、メンバー選考にも影響が出た。そこで注目されたのが、19歳の高橋藍だ。2020年1月に行われた春高バレーで優勝した東山高(京都)のエース。その年に日本代表入りを果たしたが、コロナ禍で国際大会はすべて中止となり、2021年5月に行われた中国との親善試合が国際試合デビューとなった。不慣れな中でも、関係者や記者の間で「五輪代表メンバーに入るかも」という憶測が飛び交ったのは、日本チームがアウトサイドヒッターに求めていた力を備えていたからだ。その後のネーションズリーグでは並外れた対応能力を発揮。持ち前の守備力と、しなやかかつ果敢に攻める姿勢で存在感を示して五輪代表メンバーに選ばれるだけでなく、スタメンの一角を勝ち取った。

世界大会の中でも、すべてのチームが本気で挑むオリンピックの舞台。そこで「日本バレーもなかなかやるじゃないか」という評価を得ることができたのは、緻密なバレーを実現するために、一人ひとりが高い意識をもって技術を磨いてきたことが大きい。イタリアリーグで腕を磨く石川は、フェイクトスしかり、駆け引きのうまさや、ここぞという時にサービスエースを決めるなど、相手にダメージを与えるスキルやテクニックを存分に発揮した。もう一人のエース、西田有志も今シーズンに入ってから捻挫や肉離れなどに見舞われ、コンディションは万全ではなかったが、世界に通じるスイングスピードと技術力でポイントゲッターの役割を果たした。そうした魅力あふれる個人技に加え、一人ひとりがチームの約束事を遂行するために愚直に力を尽くした。リベロ山本智大を中心とした守備を起点に得点する場面がたくさん見られたのも、個人の技術力はもとより、サーブで揺さぶる、ブロックでコースを塞ぐなど、チームの連携力があってのこと。ポーランド、ブラジルなど世界トップクラスのチームを相手にしても、連携力を駆使して対等のバレーができたことは自信になったはずだ。

今大会は多くの競技で若い選手の活躍が目立つが、男子バレーも例外ではない。スタメンの多くが3年後のパリを20代で迎える年齢であり、この経験を活かせる環境にある。戦いを終えたばかりの選手たちが、早くも次の五輪を見据えていることが頼もしく、日本チームのこれからに期待は高まるばかりだ。

【TOKYO2020】準々決勝進出なるか。予選ラウンド最終戦での勝利が絶対条件

好守で攻撃の起点をつくるリベロ山本智大。

日本は、7月30日(金)に有明アリーナ(東京都江東区)で予選ラウンド第4戦を行い、ポーランドに0ー3(22-25、21-25、24-26)で敗れて2勝2敗となった。第3戦終了時点で4チームが2勝1敗で並んでいたが、この日、3勝目をあげたポーランドとイタリアの準々決勝進出が決定。また、1勝2敗のカナダがベネズエラに勝利し、勝敗で日本、イランと並んだが、勝ち点・セット率により第5戦の結果を待たずに4位以内を確定した。日本が準々決勝に進出するには、イランに勝つことが絶対条件となった。(写真提供:FIVB)

ずぬけた成長力でチームを支える高橋藍。

ポーランド(世界ランキング2位)のような、得点能力の高い選手が揃うチームに勝つためには、サーブで揺さぶりをかけ、余裕をもってプレーさせないことが重要だ。また、被ブロックをいかに回避するかを考えながらプレーしなければならない。難しい試合になることは必至だったが、日本はイタリアとの敗戦を糧に、第1セットから冷静にプレーした。地力に勝るポーランドに1、2セットを奪われたが、そこで崩れずに仕切り直しができたことも収穫だ。高橋藍に代わり、第3セットのスタートからコートに立った高梨健太も落ち着いてプレーし、点を取られたら取り返す、互角の戦いを繰り広げた。終盤、再びリードを奪われても自分たちのバレーを見失うことなく、集中力を切らさずにボールをつなぎ、攻めることができていた。ポーランドに敗れはしたが、次につながる戦いぶりだった。

日本にとって、第5戦の勝敗が準々決勝進出の鍵になることは想定内であり、中垣内祐一監督はオリンピック前に行われたネーションズリーグに向けての会見でも「イランには勝たなければいけない」と話し、意図をもって戦ってきた。イランにとっても勝てば準々決勝進出が決まる真剣勝負に日本はどのように立ち向かうのか。2017シーズンから試行錯誤しながら築いてきたチーム力の真価に注目したい。

【A組戦績】

ポーランド  3勝1敗(イラン2ー3・イタリア3ー0、ベネズエラ3ー1、日本3ー0)勝点10

イタリア  3勝1敗(カナダ3ー2・ポーランド0ー3、日本3ー1、イラン3ー1)勝点8

カナダ 2勝2敗(イタリア2ー3・日本1ー3、イラン3ー0、ベネズエラ3ー0)勝点7 

日本 2勝2敗(ベネズエラ3ー0・カナダ3ー1、イタリア1ー3、ポーランド0ー3)勝点6

イラン 2勝2敗(ポーランド3ー2・ベネズエラ3ー0、カナダ0ー3、イタリア1ー3)勝点5

ベネズエラ 0勝4敗(日本0ー3・イラン0ー3、ポーランド1ー3、カナダ0ー3)勝点0

【TOKYO2020】イタリアに敗戦。日本男子のA組は全勝なし。4チームが2勝1敗で並ぶ混戦に

ミドルブロッカーによる得点が22。イタリアの戦略にはまり、初黒星を喫した

バレーボール男子日本代表は、7月28日(水)に有明アリーナ(東京都江東区)で予選ラウンド第3戦を行い、イタリアに1ー3(20-25、17-25、25-23、21-25)で敗れて2勝1敗となった。日本と同じA組で2戦2勝のイランも、この日カナダに敗れため、全勝が消えて4チームが2勝1敗で並ぶ混戦となっている。予選ラウンドは全5試合で、各組、上位4チームが準々決勝に進む。次戦は30日(金)。日本は強豪ポーランドと対戦する。(写真提供:FIVB)

厳しい戦いながらも、チーム最多の22得点でチームを牽引したキャプテン石川

スターティングメンバーは変わらず。関田誠大(セッター)、石川祐希(アウトサイドヒッター)、山内晶大(ミドルブロッカー)、西田有志(オポジット)、高橋藍(アウトサイドヒッター)、小野寺太志(ミドルブロッカー)、山本智大(リベロ)という布陣。

日本はカナダ戦同様、サイドアウトを取りながら、ブレイクのチャンスを待つ展開に持ち込みたかったが、第1セット中盤からは相手のサーブに崩されて、石川、西田に頼らざるを得ない展開となった。高さのあるブロックがしっかり2枚つく状況に、石川も厳しい表情。第2セットに入るとブロックにつかまる場面が増えて、日本ベンチは関田に代わり藤井直伸、高橋に代わり高梨健太、山内に代わり李博を投入。さらに終盤、石川に代えて、今大会初出場の大塚達宣をコートに送ったが戦況は変わらず。日本は第1セットに続き、第2セットも失った。

難しい局面でコートに立つことが多い藤井。相手を惑わすトスワークに期待がかかる

後がない第3セット。藤井、高梨、李をスタメンに起用した日本は、序盤からクイックやパイプなど真ん中からの攻撃を絡めてリードした。中盤で逆転を許したものの終盤まで粘り抜き、小野寺の2本連続サービスエースで同点に追いつくと、逆転でこのセットを奪った。

第3セットと同様の戦い方ができれば、その後もセットを奪うチャンスは十分にあると期待したが、第4セットは序盤から相手のブロックが立ちはだかり、思うような攻撃ができない。流れを呼び込もうと粘るがリードを奪うことはできず。21対25でこのセットも失って、日本は今大会初の黒星を喫した。

前に落とす、選手間を狙うなど、相手を揺さぶるサーブが光った小野寺

終わってみれば、イタリアのブロックによる得点が13(ベネズエラ戦は2、カナダ戦は6)と、日本が攻めあぐねたことがわかる。次のポーランド戦は、Vリーグの助っ人クビアク・ミハウとクレク・バルトシュを擁する、世界ランキング2位の強敵だけに、日本としてはまずはサーブで揺さぶりをかけ、攻撃を絞れる展開に持ち込みたい。また、相手ブロッカーを惑わす攻撃体制をいかに作れるかが、勝利をつかむ鍵になるだろう。

【A組戦績】

ポーランド  2勝1敗(イラン2ー3・イタリア3ー0、ベネズエラ3ー1)

日本 2勝1敗(ベネズエラ3ー0・カナダ3ー1、イタリア1ー3)

イラン 2勝1敗(ポーランド3ー2・ベネズエラ3ー0、カナダ0ー3)

イタリア  2勝1敗(カナダ3ー2・ポーランド0ー3、日本3ー1)

カナダ 1勝2敗(イタリア2ー3・日本1ー3、イラン3ー0)

ベネズエラ 0勝3敗(日本0ー3・イラン0ー3、ポーランド1ー3)