2022AVCカップ、優勝は逃すも準優勝は過去最高の成績。深津、大竹が個人賞に輝く

 AVCカップ(ナコンパトム/タイ)は8月14日に最終日を迎えた。真保綱一郎監督が率いる男子バレーボール日本代表は、決勝戦で中国(世界ランキング19位/8月14日時点)と対戦し、スタメン平均身長が200cm(リベロを除く)を超える中国に力及ばず、0-3(20-25、23-25、22-25)で敗れて準優勝で大会を終了した。

 残念ながら目標としていた優勝には届かなかったが、限られた時間の中でキャプテン深津旭弘と、藤中謙也が中心となってチームをまとめ上げ、過去最高の成績を残した。深津はベストセッター賞を、大竹壱青はベストオポジット賞を受賞した。

 チーム最多得点は6試合で79得点をあげた富田将馬。この大会が代表デビューとなったエバデダン ラリーも、ミドルブロッカーながら57得点と、今後が楽しみになる活躍を見せた。リベロ髙橋和幸やセッター深津ら、その時店を演出したメンバーの功績も大きい。

 尚、ブロックやサーブを得意とするアウトサイドヒッター樋口裕希は、この大会を終了後、世界選手権日本代表が事前合宿を行うイタリアへ向かい、チームに合流している。

【最終順位】
 1位 中国
 2位 日本
 3位 バーレーン
 4位 韓国
 5位 イラン
 6位 パキスタン
 7位 タイ
 8位 オーストラリア
 9位 チャイニーズタイペイ
10位 インド
11位 ホンコンチャイナ

【個人賞】
ベストアウトサイドヒッター Zhang Jingyin(中国 22)/Mohamed Abdulla(バーレーン 17)
ベストミドルブロッカー Zhang Zhejia(中国 12)/Peng Shikun(中国 15)
ベストオポジットヒッター 大竹壱青(日本 4)
ベストセッター 深津旭弘(日本 3)
ベストリベロ Husain Sultan(バーレーン 10)
最優秀選手 Zhang Jingyin(中国 22)

【日本代表の得点】
アウトサイドヒッター
11 富田将馬 79得点
22 樋口裕希 35得点
37 藤中謙也 22得点
18 仲本賢優  7得点
※アウトサイドヒッターの得点率/41%

ミドルブロッカー
30 エバデダン ラリー 57得点
40 難波尭弘 28得点
38 小野遥輝 MB 21得点
41 山田大悟 MB 1得点
※ミドルブロッカーの得点率/31%

オポジット
 4 大竹壱青 78得点
39 小澤宙輝 9得点
※オポジットの得点率/25%

セッター
 3 深津旭弘 11得点
21 永露元稀 0得点
※セッターの得点率/3%

リベロ
24 髙橋和幸
29 藤中颯志

*ポジション別得点率は総得点348点(相手チームの失点による得点は含まず)における割合です

文責:金子裕美 写真:AVC

【バレー】AVCカップ男子日本代表が決勝進出。初の栄冠を手にして、世界選手権日本代表に最高のエールを!

チームが一丸となって初の決勝進出を果たした日本。
真保監督の起用に応え、スタメンだけでなく途中出場の選手の活躍も光る。

 8月7日からAVCカップを戦う真保綱一郎監督率いる男子バレーボール日本代表は、13日にセミファイナル(1−4位)に臨み、バーレーンに3-0(27-25、25-15、25-20)で勝利して本大会初の決勝進出を決めた。

 今大会、初スタメンの小野遥輝がブロック4得点を含む10得点と活躍。深津旭弘をはじめ、好サーブで相手チームを揺さぶることができているのも頼もしい。第1セット途中、流れが滞った場面でコートに立った小澤宙輝の貢献もあり、このセットをデュースで取り切れたことが、その後のセットにも良い影響を及ぼした。
 
 スタメンはOH:樋口裕希・富田将馬、MB:小野遥輝・エバデダン ラリー、OP:大竹壱青、S:深津旭弘、L:髙橋和幸。

個人成績は以下の通り。

・富田将馬 OH 13得点
・樋口裕希 OH 11得点
・小野遥輝 MB 10得点 
・エバデダン ラリー MB 9得点
・大竹壱青 OP 7得点
・深津旭弘 S 2得点
・小澤宙輝 OP 2得点
身長187cm。ミドルブロッカーとしては小柄ながらも、豊かなジャンプ力と機動力を持ち味にアグレッシブな攻撃を展開する小野遥輝。バーレーン戦ではブロックでも役割を果たした。

 14日に行われる決勝は、勢いに乗っていた韓国をフルセットの末に倒した中国と対戦する。

 2022男子バレーボール日本代表は、今季、AVCカップ(8月7日〜14日/真保綱一郎監督)では優勝を、世界選手権(8月26日〜9月11日/フィリップ・ブラン監督)ではベスト8以上を目標に掲げて強化に取り組んできた。

 フィリップ・ブラン監督率いる日本代表は、8月26日に開幕する世界選手権(ポーランド、スロベニアの共同開催)に向けて、14日未明に事前合宿を行うイタリアへ旅立った。19日にアメリカと、20日にイタリアとフレンドリーマッチを行い、23日にスロベニアに入る予定だ。

 AVCカップ日本代表としては何としても優勝して、世界選手権日本代表に最高のエールを届けたいところだ。スタメンだけでなく、途中出場の選手が要所要所で持ち味を発揮し、チーム一丸でつかんだ決勝の舞台を大いに楽しみ、それぞれに役割を果たして勝利を呼び込んでほしい。

文責:金子裕美 写真:AVC

パリオリンピックを見据えた夏の戦いがスタート。先陣を切るAVCカップ日本代表は予選Rを1位で通過。

 パリオリンピックの出場権獲得に必要となるFIVB世界ランキングを上げるために、AVCカップ(8月7日〜14日/真保綱一郎監督)では優勝を、世界選手権(8月26日〜9月11日/フィリップ・ブラン監督)ではベスト8以上を目標に掲げて強化に取り組んできた2022男子バレーボール日本代表が、その成果を試す時を迎えている。

 先陣を切ってナコンパトム(タイ)に乗り込んだAVCカップ日本代表は、予選ラウンドを戦い、インド(25-15、25-15、25-15)、オーストラリア(27-25、25-15、25-14)をストレートで下して、C組1位で2次ラウンドに進んだ。

スタメンはOH:樋口裕希・富田将馬、MB:難波尭弘・エバデダン ラリー、OP:大竹壱青、S:深津旭弘、L:髙橋和幸。

 2試合の個人成績は以下の通り。
インド戦
・大竹壱青 OP 19得点
・エバデダン ラリー MB 10得点
・樋口裕希 OH 9得点
・難波尭弘 MB 9得点
・富田将馬 OH 7得点
・藤中謙也 OH 4得点
・仲本賢優 OH 1得点
・山田大悟 MB 1得点

オーストラリア戦
・エバデダン ラリー MB 12得点
・大竹壱青 OP 10得点
・富田将馬 OH 10得点
・樋口裕希 OH 10得点
・仲本賢優 OH 3得点
・小澤宙輝 OP 3得点
・難波尭弘 MB 3得点
※OH:アウトサイドヒッター、MB:ミドルブロッカー、OP:オポジット、S:セッター、L:リベロ

 ブラン監督のもとで世界と戦うチームをAチームとすれば、真保監督はそれ以外の選手を預かり、国内合宿を重ねて、AVCカップに向けたチームづくりを進めてきた。どちらも2022日本代表チームである、という考え方をベースに、ブラン監督の強化方針を踏襲。サーブ力の強化に加え、トータルディフェンス(ブロック戦術とレシーバーの配置を連携したシステム)の徹底を図り、Aチームの要請により入れ替えが生じても、選手がスムーズに力を発揮できる体制を整えた。

 実際に、大宅真樹(S/サントリーサンバーズ)、高梨健太(OH/ウルフドッグス名古屋)は、ネーションズリーグに途中から参加し、Aチームに定着。世界選手権に出場する。そうした現実を目の当たりにし、刺激を受けている選手の集まりがAVCカップ日本代表だ。7月末に世界選手権の壮行試合として行われた日本代表紅白戦では、Aチームに勝るとも劣らないディフェンス力と、チームとしての一体感を見せており、本大会での活躍が期待されている。

 2次ラウンドでは11日にA組2位の韓国と、12日にA組1位のタイと対戦する。

【出場選手】
*アウトサイドヒッター
11.富田 将馬 (東レアローズ)
18.仲本 賢優 (パナソニックパンサーズ) 
22.樋口 裕希 (堺ブレイザーズ) 
37.藤中 謙也 (サントリーサンバーズ) 
*ミドルブロッカー
30.エバデダン ラリー (筑波大学4年) 
38.小野 遥輝 (サントリーサンバーズ) 
40.難波 尭弘 (東レアローズ)
41.山田 大悟 (東京グレートベアーズ) 
*オポジット
 4. 大竹 壱青 (パナソニックパンサーズ) 
39.小澤 宙輝 (東レアローズ)
*セッター
 3. 深津 旭弘 (堺ブレイザーズ) 
21.永露 元稀 (ウルフドッグス名古屋) 
*リベロ
24.髙橋 和幸 (ジェイテクトSTINGS) 
29.藤中 颯志 (日本バレーボール協会)

文責:金子裕美 写真:AVC

【アジア選手権】日本が準決勝進出。途中出場の大宅、大竹が流れを変えた!

男子のアジア選手権は、17日に千葉ポートアリーナ他で順位決定予備戦2日目を行い、日本はオーストラリアに3-0(25-23、25-17、25-23)で勝利して勝点を6とした。前日まで1位につけていた中国もカタールに3-2で勝利し勝点で並んだが、セット率差で日本がE組1位となり、18日に行われる準決勝はF組2位のチャイニーズタイペイと対戦する。

前日、中国に敗れた日本。果たして、気持ちを切り替えて臨むことができるのか。滑り出しが心配されたが、第1セット中盤まではミスが重なり、決して良い状態とは言えなかった。ベンチは2回目のテクニカルタイムアウトをオーストラリアに取られた時点で2枚替えを決断。セッター藤井(前衛)のポジションにオポジット大竹壱青を、オポジット宮浦健人(後衛)のポジションにセッター大宅真樹を入れた。

「中国戦では2枚替えでの起用もなく、スタッフから信頼を得られていない自分に苛立ちを感じた」という大宅は、このチャンスを絶対にものにする、という強い気持ちで臨んだという。その気持ちを結果に結びつけるために、自身に課したのが「丁寧にトスを上げること」と「チームに火をつけること」だ。自分一人の力では難しい後者の課題を実現するために、同期で頼れるエース石川祐希にトスを集めようと考えていた。小野寺太志の好サーブでブレイクのチャンスを作ると、大宅が打ちやすいトスを石川へ。この1点をきっかけに石川もギアを上げて、日本は6連続得点で逆転に成功した。その後もオーストラリアの追撃をしのぎ、第1セットを奪うと、第2セットは序盤からチーム力を発揮した。大宅、リベロ山本智大のディグが冴える。石川も攻撃だけでなく、サーブやセットアップでも地力を発揮。前衛ではミドルブロッカー李博が躍動し、日本は4連続得点と好スタートを切った。さらに中盤、リードを広げる機会が訪れた。小野寺同様、サーブ力に定評のある李が、サービスエースを含む好サーブで6連続得点に貢献。ブレイクのチャンスでは好調の大竹や石川が得点を重ねて日本はセットを連取した。

ミラクルなプレーでチームの勝利に貢献した大竹。中垣内監督は活躍を喜びながらも、「ミラクルでは安定しない。ロジカルなプレーを」と、さらなる成長を期待していた。

第3セットは中盤の4連続失点がひびき終盤まで接戦となったが、好守でチームを支える山本がここでも魅せた。23-23からオーストラリアの大砲、トーマス・エドガーの強烈なサーブをきっちりセッターに返し、小野寺のクイック攻撃でマッチポイント。その小野寺がサーブにまわり、山本の気迫がチームに乗り移ったかのように、李がエドガーの攻撃をシャットアウトして勝利をものにした場面は見応えがあった。一人ひとりが自信を取り戻し、自分の仕事を果たせるチームに戻っていた。

ゲームを作った大宅は「チームが勝利し、(自分にとっても)自信がもてる試合になったと思う」と振り返った。大竹も、自身の力を発揮できたことに充実感を味わっていた。アジアチャンピオンまであと2戦。2人に続き、出場機会が少ない大塚達宣、福山汰一、小川智大がコートに立つ機会は訪れるのか。準決勝のチャイニーズタイペイ戦ではそこにも注目し、チーム一丸となっての勝利に期待したい。

強打に強い山本智大。この試合でも真骨頂を発揮した。

【アジア選手権】次世代の高橋、大塚、宮浦らがスタメン出場。白星スタート

9月12日に、アジア男子選手権大会が千葉ポートアリーナ他で幕を開けた。日本代表は、中垣内祐一監督のもと、東京オリンピックに出場したメンバーを中心に、福山汰一(ジェイテクト/ミドルブロッカー)、大宅真樹(サントリー/セッター)、宮浦健人(ジェイテクト/オポジット)、大竹壱青(パナソニック/オポジット)、小川智大(ウルフドッグス名古屋/リベロ)を加えた14名で臨み、初戦のカタール戦は、背中、腰などに痛みのある石川祐希(ミラノ/アウトサイドヒッター)をベンチに温存しながらも、セットカウント3-0のストレート勝ちで白星発進した。

この日のスターティングメンバーは、五輪代表の高橋藍(日本体育大学2年/アウトサイドヒッター)、大塚達宣(早稲田大学3年/アウトサイドヒッター)、小野寺太志(JT広島/ミドルブロッカー)、李博(東レ/ミドルブロッカー)、藤井直伸(東レ/セッター)、山本智大(堺/リベロ)に、新メンバー宮浦健人を加えた布陣。中垣内監督は、11日の会見で五輪メンバーと入れ替わった2名のオポジットを注目ポイントにあげ、「アジアを相手にどこまでできるのか、しっかり見ていく」と話していたが、初戦に起用したのはシニア代表デビューとなる宮浦だった。

宮浦は、2017シーズンからアンダーエイジカテゴリー日本代表の中心選手として活躍。大学3年生で臨んだ2019ユニバーシアードでは高さのあるヨーロッパ勢を相手に戦い、自信をつけて、シニア入りに意欲を示してきた。そして今年、初のシニア日本代表に選ばれ、本大会のメンバーに選出された。シャープなスイングが持ち味。攻撃の幅が広く、サイドアウトを取ることには定評がある。この日のカタール戦でも緊張は見られたものの、積み上げてきた多くの経験を力に変えて、まずまずのスタートを切った。「コンディションは万全」という宮浦。これまでも実戦を踏んで力をつけてきた選手だけに、試合を重ねるごとに持ち味を発揮し、成長する姿を見せてほしい。

宮浦健人(22歳)
鎮西高校→早稲田大学→2021年4月より、ジェイテクトSTINGS
持ち味:シャープなスイング
「スパイクだけでなく、サーブも注目してほしい」
今大会の目標
「自分の力を出し切ること」

【アンダーエイジカテゴリー代表歴】
2017年/U-19アジア選手権・U-19世界選手権
2018年/U-20アジア選手権
2019年/ユニバーシアード競技大会(ナポリ)・U-23アジア選手権
※いずれもオポジットで出場。
宮浦(19)、大塚(5)、福山(9)、3人の共通点は指先の「W」。次戦以降も早稲田旋風に期待したい。