【アジア選手権】次世代の高橋、大塚、宮浦らがスタメン出場。白星スタート

9月12日に、アジア男子選手権大会が千葉ポートアリーナ他で幕を開けた。日本代表は、中垣内祐一監督のもと、東京オリンピックに出場したメンバーを中心に、福山汰一(ジェイテクト/ミドルブロッカー)、大宅真樹(サントリー/セッター)、宮浦健人(ジェイテクト/オポジット)、大竹壱青(パナソニック/オポジット)、小川智大(ウルフドッグス名古屋/リベロ)を加えた14名で臨み、初戦のカタール戦は、背中、腰などに痛みのある石川祐希(ミラノ/アウトサイドヒッター)をベンチに温存しながらも、セットカウント3-0のストレート勝ちで白星発進した。

この日のスターティングメンバーは、五輪代表の高橋藍(日本体育大学2年/アウトサイドヒッター)、大塚達宣(早稲田大学3年/アウトサイドヒッター)、小野寺太志(JT広島/ミドルブロッカー)、李博(東レ/ミドルブロッカー)、藤井直伸(東レ/セッター)、山本智大(堺/リベロ)に、新メンバー宮浦健人を加えた布陣。中垣内監督は、11日の会見で五輪メンバーと入れ替わった2名のオポジットを注目ポイントにあげ、「アジアを相手にどこまでできるのか、しっかり見ていく」と話していたが、初戦に起用したのはシニア代表デビューとなる宮浦だった。

宮浦は、2017シーズンからアンダーエイジカテゴリー日本代表の中心選手として活躍。大学3年生で臨んだ2019ユニバーシアードでは高さのあるヨーロッパ勢を相手に戦い、自信をつけて、シニア入りに意欲を示してきた。そして今年、初のシニア日本代表に選ばれ、本大会のメンバーに選出された。シャープなスイングが持ち味。攻撃の幅が広く、サイドアウトを取ることには定評がある。この日のカタール戦でも緊張は見られたものの、積み上げてきた多くの経験を力に変えて、まずまずのスタートを切った。「コンディションは万全」という宮浦。これまでも実戦を踏んで力をつけてきた選手だけに、試合を重ねるごとに持ち味を発揮し、成長する姿を見せてほしい。

宮浦健人(22歳)
鎮西高校→早稲田大学→2021年4月より、ジェイテクトSTINGS
持ち味:シャープなスイング
「スパイクだけでなく、サーブも注目してほしい」
今大会の目標
「自分の力を出し切ること」

【アンダーエイジカテゴリー代表歴】
2017年/U-19アジア選手権・U-19世界選手権
2018年/U-20アジア選手権
2019年/ユニバーシアード競技大会(ナポリ)・U-23アジア選手権
※いずれもオポジットで出場。
宮浦(19)、大塚(5)、福山(9)、3人の共通点は指先の「W」。次戦以降も早稲田旋風に期待したい。

【TOKYO2020】ベスト8敗退も、3年後のパリに向けて確かな手応え

イランに勝利した後、石川を労う中垣内監督。

2008年の北京五輪以来、3大会ぶりにオリンピックの舞台に立った日本は、予選ラウンド最終戦でアジア1位のイランを破り、準々決勝に進出。準々決勝では、長きにわたり世界王者に君臨するプラジルにセットカウント0-3で敗れたものの、SNSで「男子バレーがおもしろい」などのコメントが飛び交う熱い戦いを演じた。もちろん選手は悔しさを噛み締めているだろうが、今大会を戦う中で、3年後のパリにつながる確かな手応えを得たことは間違いない。(写真提供:FIVB)

中垣内ジャパンは2017年に結成以来、5年間にわたり、懸命にデータを取り、分析して、世界と戦えるチームづくりを模索してきた。選手に求められたのは、より一層の主体性だ。チーム目標を人ごとではなく、自分ごととしてとらえて本気で取り組む姿勢なくして、自国開催のオリンピックに立ち向かうことはできないからだ。その雰囲気をいち早く察してプロに転向し、海外で武者修行する選択をした柳田将洋がキャプテンに任命された。そこに五輪経験者、福澤達哉が加わり、石川祐希や小野寺太志、西田有志ら、チームの主軸になる若手選手の個性を尊重しつつも、チームを束ねてきた。2019年に行われたW杯4位は、チームを統括する立場にある中垣内祐一監督をはじめ、すべてのスタッフと、チームの戦術をコート上で体現した選手たちの努力の結晶であり、東京五輪に向けて大きな弾みとなった。

守備からの攻撃参加が体に染み付いている高橋。そこも優れていることの一つ。

東京五輪が予定通りに昨年行われていれば、W杯メンバーを軸に代表選考が行われ、柳田、福澤も五輪代表に選ばれていたに違いない。1年延期となり、2024年に開催予定のパリ五輪も視野に入れたメンバー選考が色濃くなって、石川が新キャプテンに抜擢され、メンバー選考にも影響が出た。そこで注目されたのが、19歳の高橋藍だ。2020年1月に行われた春高バレーで優勝した東山高(京都)のエース。その年に日本代表入りを果たしたが、コロナ禍で国際大会はすべて中止となり、2021年5月に行われた中国との親善試合が国際試合デビューとなった。不慣れな中でも、関係者や記者の間で「五輪代表メンバーに入るかも」という憶測が飛び交ったのは、日本チームがアウトサイドヒッターに求めていた力を備えていたからだ。その後のネーションズリーグでは並外れた対応能力を発揮。持ち前の守備力と、しなやかかつ果敢に攻める姿勢で存在感を示して五輪代表メンバーに選ばれるだけでなく、スタメンの一角を勝ち取った。

世界大会の中でも、すべてのチームが本気で挑むオリンピックの舞台。そこで「日本バレーもなかなかやるじゃないか」という評価を得ることができたのは、緻密なバレーを実現するために、一人ひとりが高い意識をもって技術を磨いてきたことが大きい。イタリアリーグで腕を磨く石川は、フェイクトスしかり、駆け引きのうまさや、ここぞという時にサービスエースを決めるなど、相手にダメージを与えるスキルやテクニックを存分に発揮した。もう一人のエース、西田有志も今シーズンに入ってから捻挫や肉離れなどに見舞われ、コンディションは万全ではなかったが、世界に通じるスイングスピードと技術力でポイントゲッターの役割を果たした。そうした魅力あふれる個人技に加え、一人ひとりがチームの約束事を遂行するために愚直に力を尽くした。リベロ山本智大を中心とした守備を起点に得点する場面がたくさん見られたのも、個人の技術力はもとより、サーブで揺さぶる、ブロックでコースを塞ぐなど、チームの連携力があってのこと。ポーランド、ブラジルなど世界トップクラスのチームを相手にしても、連携力を駆使して対等のバレーができたことは自信になったはずだ。

今大会は多くの競技で若い選手の活躍が目立つが、男子バレーも例外ではない。スタメンの多くが3年後のパリを20代で迎える年齢であり、この経験を活かせる環境にある。戦いを終えたばかりの選手たちが、早くも次の五輪を見据えていることが頼もしく、日本チームのこれからに期待は高まるばかりだ。