【アジア選手権】中国に敗れた日本。準決勝進出はオーストラリア戦勝利が条件に。

男子のアジア選手権は、16日に千葉ポートアリーナ他で順位決定予備戦を行い、予選グループリーグ戦を3連勝で突破した日本(A組1位)は、中国(C組2位)と対戦。セットカウント1-3(19-25、29-27、21-25、19-25)で敗れて初の黒星を喫した。コンディション不良でベンチスタートだった石川祐希が、予選グループリーグ戦3日目にコートに立ち、インドに圧勝。アジアの強豪と対戦する順位決定予備戦での活躍に期待が高まったが、この日は個の力が噛み合わず、どのセットも中国に連続得点を許す苦しい展開で、日本は勝ち点を伸ばすことができなかった。

終わってみれば、サーブ(中国8得点/日本3得点)とブロック(中国17得点/日本1得点)による得点差が勝敗を分けた一戦だった。宮浦健人が「サーブが狙いどおりにいかず、リベロに集まってしまった」と話したように、日本はサーブで揺さぶることができず、逆に相手のサーブで守備を崩され、攻撃が単調になりがちに。石川は「中国の強みであるブロックで点を奪われ、相手を乗せる形になってしまった」と、反省を口にした。

チームは対戦相手のデータを収集、分析し、サーブレシーブの位置取りやサーブの狙いどころなど、戦術を選手と共有して試合に臨んでいるが、狙いどおりに展開できない場合はそのつど修正が必要になる。この日はベンチも含めて、有効な対応取れなかったことが課題として残る一戦となった。

順位決定予備戦では予選グループリーグ戦で当たったチームとは対戦せず、予選グループリーグ戦の対戦成績が持ち越されるため、17日に行われる日本(勝点3/2位)対オーストラリア(勝点2/4位)、中国(勝点4/1位)対カタール(勝点3/日本とはセット率差で現在3位)の結果により順位が決定し、上位2チームが18日に行われる準決勝に進む。どのチームにも準決勝進出のチャンスがあるため、難しい試合になることが予想されるが、次戦に向けて石川は、「全員がベストコンディション、ベストなメンタルで試合に臨んでくれるはず。オーストラリアもブロックが高いチームだが、(中国戦でうまくいかなかったところを)修正し、自分がリズムを作っていく」と、決意を口にした。チーム一丸となっての勝利に期待したい。

【アジア選手権】頼れる石川不在で、最年少高橋藍が覚醒。「チームは自分が引っ張る」

男子のアジア選手権は、13日に千葉ポートアリーナ他で予選グループリーグ戦2日目を行い、日本はバーレーンに3-1(23-25、25-17、25-23、25-16)で勝利し、2勝目をあげた。

前日のカタール戦から大きくメンバーを入れ替え、高梨健太(ウルフドッグス名古屋/アウトサイドヒッター)、高橋藍(日本体育大学2年/アウトサイドヒッター)、大竹壱青(パナソニック/オポジット)、福山汰一(ジェイテクト/ミドルブロッカー)、山内昌大(パナソニック/ミドルブロッカー)、大宅真樹(サントリー/セッター)、小川智大(ウルフドッグス名古屋/リベロ)という布陣で臨んだ日本。オリンピック代表を逃したメンバーは、このチャンスを生かして存在感を示したいところだったが、前日インドを破り、勢いに乗るバーレーンに苦しい戦いを強いられた。

多少サーブレシーブが乱れてもクイック攻撃を多用するバーレーンに対し、ブロックの的を絞りきれず、第1セットを競り負けた日本。第2セットに入ると、「頼れる石川選手はコートにいない。誰が決め手になる? 自分だろう…」そんな自問自答をしたという最年少の高橋が奮起してセットを取り返した。

これで勢いに乗るかと思われたが、第3セットは再び、思うように点差を広げることができない展開。ベンチはセット中盤で大竹を諦め、宮浦健人(ジェイテクト/オポジット)を投入。その宮浦がシャープなスパイクでサイドアウトを奪い、チームを勢いづけた。終盤は、コースをつく高橋の鋭いサーブや、福山に代わりコートに入った小野寺太志(JT広島/ミドルブロッカー)のクイック攻撃などで得点し、日本は粘るバーレーンを突き放してセットを連取した。

続く第4セットは、宮浦、小野寺を続投。さらにセッターを大宅から藤井(東レ)に、リベロを小川から山本(堺)に代えて地盤を固めた。すると、五輪で自信を深めた小野寺、藤井、山本が地力を発揮。藤井は声を出し、表情豊かにチームに活気をもたらす。小野寺はブロックでタッチを取りチャンスを作る。攻撃では巧みなモーションで相手ブロッカーを引きつけ、アウトサイドヒッターのパイプ攻撃を援護する。山本は得意のディグで相手の得点を阻む。前日、シニアデビューした宮浦も肩の力が抜けて、落ち着いていた。こうした数字に表れない力により次第に歯車がかみ合い始めた日本は、セット中盤で逆転に成功。その後も、この日、最多得点(26点)の高橋が攻撃だけでなくブロックやサーブでも点を奪い、危なげなくこのセットをものにして、日本は3-1で勝利した。試合後、高橋が発した「(決め手としての)責任を果たせてよかった」という言葉が頼もしかった。

【アジア選手権】次世代の高橋、大塚、宮浦らがスタメン出場。白星スタート

9月12日に、アジア男子選手権大会が千葉ポートアリーナ他で幕を開けた。日本代表は、中垣内祐一監督のもと、東京オリンピックに出場したメンバーを中心に、福山汰一(ジェイテクト/ミドルブロッカー)、大宅真樹(サントリー/セッター)、宮浦健人(ジェイテクト/オポジット)、大竹壱青(パナソニック/オポジット)、小川智大(ウルフドッグス名古屋/リベロ)を加えた14名で臨み、初戦のカタール戦は、背中、腰などに痛みのある石川祐希(ミラノ/アウトサイドヒッター)をベンチに温存しながらも、セットカウント3-0のストレート勝ちで白星発進した。

この日のスターティングメンバーは、五輪代表の高橋藍(日本体育大学2年/アウトサイドヒッター)、大塚達宣(早稲田大学3年/アウトサイドヒッター)、小野寺太志(JT広島/ミドルブロッカー)、李博(東レ/ミドルブロッカー)、藤井直伸(東レ/セッター)、山本智大(堺/リベロ)に、新メンバー宮浦健人を加えた布陣。中垣内監督は、11日の会見で五輪メンバーと入れ替わった2名のオポジットを注目ポイントにあげ、「アジアを相手にどこまでできるのか、しっかり見ていく」と話していたが、初戦に起用したのはシニア代表デビューとなる宮浦だった。

宮浦は、2017シーズンからアンダーエイジカテゴリー日本代表の中心選手として活躍。大学3年生で臨んだ2019ユニバーシアードでは高さのあるヨーロッパ勢を相手に戦い、自信をつけて、シニア入りに意欲を示してきた。そして今年、初のシニア日本代表に選ばれ、本大会のメンバーに選出された。シャープなスイングが持ち味。攻撃の幅が広く、サイドアウトを取ることには定評がある。この日のカタール戦でも緊張は見られたものの、積み上げてきた多くの経験を力に変えて、まずまずのスタートを切った。「コンディションは万全」という宮浦。これまでも実戦を踏んで力をつけてきた選手だけに、試合を重ねるごとに持ち味を発揮し、成長する姿を見せてほしい。

宮浦健人(22歳)
鎮西高校→早稲田大学→2021年4月より、ジェイテクトSTINGS
持ち味:シャープなスイング
「スパイクだけでなく、サーブも注目してほしい」
今大会の目標
「自分の力を出し切ること」

【アンダーエイジカテゴリー代表歴】
2017年/U-19アジア選手権・U-19世界選手権
2018年/U-20アジア選手権
2019年/ユニバーシアード競技大会(ナポリ)・U-23アジア選手権
※いずれもオポジットで出場。
宮浦(19)、大塚(5)、福山(9)、3人の共通点は指先の「W」。次戦以降も早稲田旋風に期待したい。

【TOKYO2020】ベスト8敗退も、3年後のパリに向けて確かな手応え

イランに勝利した後、石川を労う中垣内監督。

2008年の北京五輪以来、3大会ぶりにオリンピックの舞台に立った日本は、予選ラウンド最終戦でアジア1位のイランを破り、準々決勝に進出。準々決勝では、長きにわたり世界王者に君臨するプラジルにセットカウント0-3で敗れたものの、SNSで「男子バレーがおもしろい」などのコメントが飛び交う熱い戦いを演じた。もちろん選手は悔しさを噛み締めているだろうが、今大会を戦う中で、3年後のパリにつながる確かな手応えを得たことは間違いない。(写真提供:FIVB)

中垣内ジャパンは2017年に結成以来、5年間にわたり、懸命にデータを取り、分析して、世界と戦えるチームづくりを模索してきた。選手に求められたのは、より一層の主体性だ。チーム目標を人ごとではなく、自分ごととしてとらえて本気で取り組む姿勢なくして、自国開催のオリンピックに立ち向かうことはできないからだ。その雰囲気をいち早く察してプロに転向し、海外で武者修行する選択をした柳田将洋がキャプテンに任命された。そこに五輪経験者、福澤達哉が加わり、石川祐希や小野寺太志、西田有志ら、チームの主軸になる若手選手の個性を尊重しつつも、チームを束ねてきた。2019年に行われたW杯4位は、チームを統括する立場にある中垣内祐一監督をはじめ、すべてのスタッフと、チームの戦術をコート上で体現した選手たちの努力の結晶であり、東京五輪に向けて大きな弾みとなった。

守備からの攻撃参加が体に染み付いている高橋。そこも優れていることの一つ。

東京五輪が予定通りに昨年行われていれば、W杯メンバーを軸に代表選考が行われ、柳田、福澤も五輪代表に選ばれていたに違いない。1年延期となり、2024年に開催予定のパリ五輪も視野に入れたメンバー選考が色濃くなって、石川が新キャプテンに抜擢され、メンバー選考にも影響が出た。そこで注目されたのが、19歳の高橋藍だ。2020年1月に行われた春高バレーで優勝した東山高(京都)のエース。その年に日本代表入りを果たしたが、コロナ禍で国際大会はすべて中止となり、2021年5月に行われた中国との親善試合が国際試合デビューとなった。不慣れな中でも、関係者や記者の間で「五輪代表メンバーに入るかも」という憶測が飛び交ったのは、日本チームがアウトサイドヒッターに求めていた力を備えていたからだ。その後のネーションズリーグでは並外れた対応能力を発揮。持ち前の守備力と、しなやかかつ果敢に攻める姿勢で存在感を示して五輪代表メンバーに選ばれるだけでなく、スタメンの一角を勝ち取った。

世界大会の中でも、すべてのチームが本気で挑むオリンピックの舞台。そこで「日本バレーもなかなかやるじゃないか」という評価を得ることができたのは、緻密なバレーを実現するために、一人ひとりが高い意識をもって技術を磨いてきたことが大きい。イタリアリーグで腕を磨く石川は、フェイクトスしかり、駆け引きのうまさや、ここぞという時にサービスエースを決めるなど、相手にダメージを与えるスキルやテクニックを存分に発揮した。もう一人のエース、西田有志も今シーズンに入ってから捻挫や肉離れなどに見舞われ、コンディションは万全ではなかったが、世界に通じるスイングスピードと技術力でポイントゲッターの役割を果たした。そうした魅力あふれる個人技に加え、一人ひとりがチームの約束事を遂行するために愚直に力を尽くした。リベロ山本智大を中心とした守備を起点に得点する場面がたくさん見られたのも、個人の技術力はもとより、サーブで揺さぶる、ブロックでコースを塞ぐなど、チームの連携力があってのこと。ポーランド、ブラジルなど世界トップクラスのチームを相手にしても、連携力を駆使して対等のバレーができたことは自信になったはずだ。

今大会は多くの競技で若い選手の活躍が目立つが、男子バレーも例外ではない。スタメンの多くが3年後のパリを20代で迎える年齢であり、この経験を活かせる環境にある。戦いを終えたばかりの選手たちが、早くも次の五輪を見据えていることが頼もしく、日本チームのこれからに期待は高まるばかりだ。

【TOKYO2020】準々決勝進出なるか。予選ラウンド最終戦での勝利が絶対条件

好守で攻撃の起点をつくるリベロ山本智大。

日本は、7月30日(金)に有明アリーナ(東京都江東区)で予選ラウンド第4戦を行い、ポーランドに0ー3(22-25、21-25、24-26)で敗れて2勝2敗となった。第3戦終了時点で4チームが2勝1敗で並んでいたが、この日、3勝目をあげたポーランドとイタリアの準々決勝進出が決定。また、1勝2敗のカナダがベネズエラに勝利し、勝敗で日本、イランと並んだが、勝ち点・セット率により第5戦の結果を待たずに4位以内を確定した。日本が準々決勝に進出するには、イランに勝つことが絶対条件となった。(写真提供:FIVB)

ずぬけた成長力でチームを支える高橋藍。

ポーランド(世界ランキング2位)のような、得点能力の高い選手が揃うチームに勝つためには、サーブで揺さぶりをかけ、余裕をもってプレーさせないことが重要だ。また、被ブロックをいかに回避するかを考えながらプレーしなければならない。難しい試合になることは必至だったが、日本はイタリアとの敗戦を糧に、第1セットから冷静にプレーした。地力に勝るポーランドに1、2セットを奪われたが、そこで崩れずに仕切り直しができたことも収穫だ。高橋藍に代わり、第3セットのスタートからコートに立った高梨健太も落ち着いてプレーし、点を取られたら取り返す、互角の戦いを繰り広げた。終盤、再びリードを奪われても自分たちのバレーを見失うことなく、集中力を切らさずにボールをつなぎ、攻めることができていた。ポーランドに敗れはしたが、次につながる戦いぶりだった。

日本にとって、第5戦の勝敗が準々決勝進出の鍵になることは想定内であり、中垣内祐一監督はオリンピック前に行われたネーションズリーグに向けての会見でも「イランには勝たなければいけない」と話し、意図をもって戦ってきた。イランにとっても勝てば準々決勝進出が決まる真剣勝負に日本はどのように立ち向かうのか。2017シーズンから試行錯誤しながら築いてきたチーム力の真価に注目したい。

【A組戦績】

ポーランド  3勝1敗(イラン2ー3・イタリア3ー0、ベネズエラ3ー1、日本3ー0)勝点10

イタリア  3勝1敗(カナダ3ー2・ポーランド0ー3、日本3ー1、イラン3ー1)勝点8

カナダ 2勝2敗(イタリア2ー3・日本1ー3、イラン3ー0、ベネズエラ3ー0)勝点7 

日本 2勝2敗(ベネズエラ3ー0・カナダ3ー1、イタリア1ー3、ポーランド0ー3)勝点6

イラン 2勝2敗(ポーランド3ー2・ベネズエラ3ー0、カナダ0ー3、イタリア1ー3)勝点5

ベネズエラ 0勝4敗(日本0ー3・イラン0ー3、ポーランド1ー3、カナダ0ー3)勝点0

【TOKYO2020】イタリアに敗戦。日本男子のA組は全勝なし。4チームが2勝1敗で並ぶ混戦に

ミドルブロッカーによる得点が22。イタリアの戦略にはまり、初黒星を喫した

バレーボール男子日本代表は、7月28日(水)に有明アリーナ(東京都江東区)で予選ラウンド第3戦を行い、イタリアに1ー3(20-25、17-25、25-23、21-25)で敗れて2勝1敗となった。日本と同じA組で2戦2勝のイランも、この日カナダに敗れため、全勝が消えて4チームが2勝1敗で並ぶ混戦となっている。予選ラウンドは全5試合で、各組、上位4チームが準々決勝に進む。次戦は30日(金)。日本は強豪ポーランドと対戦する。(写真提供:FIVB)

厳しい戦いながらも、チーム最多の22得点でチームを牽引したキャプテン石川

スターティングメンバーは変わらず。関田誠大(セッター)、石川祐希(アウトサイドヒッター)、山内晶大(ミドルブロッカー)、西田有志(オポジット)、高橋藍(アウトサイドヒッター)、小野寺太志(ミドルブロッカー)、山本智大(リベロ)という布陣。

日本はカナダ戦同様、サイドアウトを取りながら、ブレイクのチャンスを待つ展開に持ち込みたかったが、第1セット中盤からは相手のサーブに崩されて、石川、西田に頼らざるを得ない展開となった。高さのあるブロックがしっかり2枚つく状況に、石川も厳しい表情。第2セットに入るとブロックにつかまる場面が増えて、日本ベンチは関田に代わり藤井直伸、高橋に代わり高梨健太、山内に代わり李博を投入。さらに終盤、石川に代えて、今大会初出場の大塚達宣をコートに送ったが戦況は変わらず。日本は第1セットに続き、第2セットも失った。

難しい局面でコートに立つことが多い藤井。相手を惑わすトスワークに期待がかかる

後がない第3セット。藤井、高梨、李をスタメンに起用した日本は、序盤からクイックやパイプなど真ん中からの攻撃を絡めてリードした。中盤で逆転を許したものの終盤まで粘り抜き、小野寺の2本連続サービスエースで同点に追いつくと、逆転でこのセットを奪った。

第3セットと同様の戦い方ができれば、その後もセットを奪うチャンスは十分にあると期待したが、第4セットは序盤から相手のブロックが立ちはだかり、思うような攻撃ができない。流れを呼び込もうと粘るがリードを奪うことはできず。21対25でこのセットも失って、日本は今大会初の黒星を喫した。

前に落とす、選手間を狙うなど、相手を揺さぶるサーブが光った小野寺

終わってみれば、イタリアのブロックによる得点が13(ベネズエラ戦は2、カナダ戦は6)と、日本が攻めあぐねたことがわかる。次のポーランド戦は、Vリーグの助っ人クビアク・ミハウとクレク・バルトシュを擁する、世界ランキング2位の強敵だけに、日本としてはまずはサーブで揺さぶりをかけ、攻撃を絞れる展開に持ち込みたい。また、相手ブロッカーを惑わす攻撃体制をいかに作れるかが、勝利をつかむ鍵になるだろう。

【A組戦績】

ポーランド  2勝1敗(イラン2ー3・イタリア3ー0、ベネズエラ3ー1)

日本 2勝1敗(ベネズエラ3ー0・カナダ3ー1、イタリア1ー3)

イラン 2勝1敗(ポーランド3ー2・ベネズエラ3ー0、カナダ0ー3)

イタリア  2勝1敗(カナダ3ー2・ポーランド0ー3、日本3ー1)

カナダ 1勝2敗(イタリア2ー3・日本1ー3、イラン3ー0)

ベネズエラ 0勝3敗(日本0ー3・イラン0ー3、ポーランド1ー3)

【TOKYO2020】カナダも撃破。リベロ山本の献身的な守備に攻撃陣が応える、チーム一丸となっての勝利に歓喜

最後まで気持ちを切らすことなく戦い、3-1でカナダに勝利。

バレーボール男子日本代表は、7月26日(月)に有明アリーナ(東京都江東区)で予選ラウンド第2戦を行い、カナダに3ー1(23-25、25-23、25-23、25-20)で勝利して2勝目をあげた。リベロ山本の献身的な守備に攻撃陣が応える、チーム一丸となっての勝利に歓喜した。(写真提供:FIVB)

紅白戦での右足首捻挫に加え、VNLで左太もも肉離れも、気力で克服し、この日は西田らしいアグレッシブな攻撃でチームの勝利に貢献した。

スターティングメンバーは第1戦と変わらず。関田誠大(セッター)、石川祐希(アウトサイドヒッター)、山内晶大(ミドルブロッカー)、西田有志(オポジット)、高橋藍(アウトサイドヒッター)、小野寺太志(ミドルブロッカー)、山本智大(リベロ)という布陣。
準々決勝進出に向けて、お互いに負けられないという気持ちが激突し、第1セット序盤から引き締まった試合となった。第1セットはカナダ、第2セットは日本が取り、セットカウント1対1となった時点ではまだ、どちらに流れが傾くかわからない状況だったが、第3セットに入ると、この日最多得点(23得点)の西田が切れ味のいいスパイクを連発。エース石川も状況に応じて繰り出す技ありの攻撃で相手を突き放し、日本が第3セットを奪った。続く第4セットはカナダのミスにも助けられ、日本が終始リードを奪う展開。ディグに定評のある山本、ボール裁きが秀逸な関田の頑張りに攻撃陣が応える、まさにつなぐバレーで勝った日本が、嬉しい2勝目をあげた。

サーブレシーブにディグに本領を発揮した山本。

セッター関田は「1セット目こそ、大事な場面での1点が取れなかったが、2セット目以降、それが取れたことが勝因。一人ひとりの気持ちがボールに乗っていた。サーブレシーブが安定していたこともよかった」と振り返った。また、「着実にチーム力は上がっているので、これからが楽しみ。次戦のイタリアは格上の相手だが、自分たちのバレーをして勝ちたい」と話した。

【A組戦績】
日本 2勝(ベネズエラ3ー0・カナダ3ー1)
イラン 2勝(ポーランド3ー2・ベネズエラ3ー0)
ポーランド  1勝1敗(イラン2ー3・イタリア3ー0)
イタリア  1勝1敗(カナダ3ー2・ポーランド0ー3)
カナダ 0勝2敗(イタリア2ー3・日本1ー3)
ベネズエラ 0勝2敗(日本0ー3・イラン0ー3)

チーム一丸となっての勝利に選手、スタッフともに満面の笑み。次戦に期待がかかる。

【TOKYO2020】ベネズエラに完勝。幸先の良いスタートを切る!

初戦にもかかわらず、しっかりと地力を発揮した日本。

バレーボール男子日本代表は、7月24日(土)に有明アリーナ(東京都江東区)で予選ラウンド初戦を迎え、ベネズエラに3ー0(25-21、25-20、25-15)で勝利して幸先の良いスタートを切った。オリンピックではバルセロナ大会以来29年ぶりの勝利。(写真提供:FIVB)

トスワークだけでなく、サーブに、つなぎに、気迫あふれるプレーを見せた関田。

スターティングメンバーは、関田誠大(セッター)、石川祐希(アウトサイドヒッター)、山内晶大(ミドルブロッカー)、西田有志(オポジット)、高橋藍(アウトサイドヒッター)、小野寺太志(ミドルブロッカー)、山本智大(リベロ)。
第1セットは序盤からサイドアウトの応酬が続いたが、中盤、関田のサービスエースで流れを引き寄せると、山内が3連続ブロックポイントをあげて19対16と一気に突き放した。もう一人のミドル小野寺もブロックを決めてセットポイントを握ると、最後はエース石川がスパイクを決めて第1セットを奪った。
サーブで揺さぶることと、2枚ブロックが機能していた日本は、第2セットに入っても落ち着いたゲーム運びでリードを保つ展開。このセットを奪うと、第3セットも序盤から徐々に相手を突き放し、中盤に入ると硬さが抜けた西田がサーブ、スパイクに躍動。終盤は、1、2セットも途中出場した藤井直伸(セッター)、清水邦広(オポジット)に続き、高梨健太(アウトサイドヒッター)、さらには李博(ミドルブロッカー)がコートに立った。北京大会を経験している清水が落ち着いて得点しマッチポイントを握ると、最後は日本の切り札ともいうべき藤井、李がコンビ攻撃を鮮やかに決めて25対15。日本はストレート勝ちで1勝目をあげた。
予選ラウンドは、6チームずつA、Bの2組に分かれて1回総当り戦で行われ、各組上位4チーム(計8チーム)が準々決勝へ進出する。まずは準々決勝進出を目指す日本にとって、次のカナダは勝利しなければいけない相手。この勝利を弾みに、次戦でも最高のパフォーマンスを期待したい。

東京五輪出場内定選手12名が決定

日本バレーボール協会は、6月21日に東京オリンピックの出場内定選手12名を発表した。若手の台頭で競争が激化していたアウトサイドヒッターは、現在、リミニ(イタリア)で行われているバレーボールネーションズリーグで安定感のあるプレーを披露している高橋藍、高梨健太。アウトサイドヒッターとセッター対角、2つのポジションを器用にこなす大塚達宣が内定を勝ち取った。出場内定選手12名は下記の通り。競技は7月24日(土)から有明アリーナ(東京都江東区)で開催される。

【アウトサイドヒッター】
石川 祐希 25歳/パワーバレー・ミラノ(イタリア)/キャプテン
「今回、東京オリンピック日本代表に選出していただき大変光栄で、このような大きな舞台でプレーができることをとても嬉しく思います。 結果を求めるとともに、この大会では最高のパフォーマンスを発揮します。 また、今まで支えてくださった方々への恩返しや感謝の気持ちを伝える舞台として全力で臨みます。 まずは、今まで練習でやってきたことや試合で経験してきたことを出せるようにすることが大事だと思います。どんな状況でもその環境や雰囲気を作ることを意識していきたいです。 その中で、苦しい場面などプレッシャーがかかった場面で、プレー面でも、精神面でも、チームの支えになるようにチームを引っ張りたいです。 イタリアという世界のトップリーグで戦ってきて、自分の感情を表現すること、1点の重要性、プレッシャーのかかった時に練習と同じプレーをすることの大切さなど、たくさんのことを学んできたので、それを練習から実践し、自信を持って東京オリンピックに臨めるように取り組みたいです。 若いメンバーは今まで海外の強豪チームと対戦する機会がなかったので、ネーションズリーグではオリンピック前にこのような試合ができ、また海外のチームのことを知ってイメージもできるようになり、チームとしてはとてもいい経験ができています。 課題は、強いサーブが来た時のレセプション(サーブレシーブ)の関係性や失点と、トランジションでの得点の仕方がまだ確立されていないことです。 レセプションは日本チームの強みでもあるので崩されないように戦いたいです。 トランジションでは、ディフェンスはできているので、繋いだボールを得点に繋げられる判断力を高めていきたいです。 個人的には、エースとして苦しい時やここ1点欲しい時に確実に取ることと、キャプテンとしてチームを苦しい時に支えられるように精神面でも頼りになる存在になることでチームに貢献したいです」

【アウトサイドヒッター】
高梨 健太 24歳/ウルフドッグス名古屋
「誰もが目指す場所でバレーボールができる喜びを感じるとともに、もっとやらないといけないという気持ちです。ネーションズリーグではレセプション(サーブレシーブ)とディグ(スパイクレシーブ)のスキル向上が課題であると感じました。オリンピックでは、持てる力を出し切りたいと思います」

【アウトサイドヒッター】
大塚 達宣 20歳/早稲田大学3年
「12人という限られたメンバーの中で、自分がこのチームに何で貢献できるのか、自分の役割は何なのかを考え、チームの勝利のために全力を尽くしたいと思います。 私のプレーの特徴を挙げるとするならばスパイクでのコース打ちやブロックを利用したスパイクなど攻撃面だと思うので、いつも以上のことをするのではなく、私が持っている全ての力を出し切ることでチームに貢献したいと思います。 ネーションズリーグは初めての国際大会で、コートに立っている時間だけでなく立っていない時間も含め、全てが自分のためになっていると感じました。また、世界相手に何が通用するのかを肌で感じることができ、これから一つ一つのプレーの質を上げていくことが必要だと思いました」

【アウトサイドヒッター】
高橋 藍 19歳/日本体育大学2年
「東京オリンピックの代表選手に選出していただいたことを嬉しく思いますし、感謝の気持ちでいっぱいです。ただ、この選考に落ちた選手がいることを忘れずに、その選手の分まで頑張りたいと思いますし、日本のバレーボールを全面に出して勝ちたいと思います。 最年少ということで、まずは自分自身のプレーを全面に出しチームの勝利に貢献することが大切で、それがチームの雰囲気をよくすることに繋がったり、得点に繋がると思うので、若さならではの力を出したいと思います。 ネーションズリーグでは、最初決まっていたスパイクや、サーブレシーブなどが、試合を重ねるにつれ成功率が下がっていってしまうという課題が出たので、連戦でも自分のプレーを安定して出せるようにすることを追求していきたいと思います。オリンピックで活躍するためにもそこが重要になると思います」

【オポジット】
清水 邦広 34歳/パナソニックパンサーズ
「もう一度この舞台に立てるのはとても光栄です。北京世代の分も今までの思いをこの舞台にぶつけていきたいと思います。振り返ると自分自身だけでは到底辿り着けなかったと思います。今まで周りの皆さんにたくさん助けられて、ここまで来ることができました。特に福澤選手がいたからこそ、もう一度這い上がれたと思います。自分自身も投げやりにならず、日々積み重ねがあったからこそだと思います。最年長でもありオリンピック経験者でもあるので、このプレッシャーの中でいかに自分たちの持ち味を出せるか、皆に教えられるものは教えていきたいです。自分が出た時はチームを落ち着かせたり変化させられるように、ベテランならではのプレーをしていきたいです」

【オポジット】
西田 有志 21歳/ジェイテクトSTINGS
「多くの思いを背負い頑張りたいと思います。 ネーションズリーグでは途中まで出場メンバーに入ることができず、すごくもどかしい気持ちが強かったですが、コート外からの景色は、コートの中とは全く違ったので、多くのことが勉強になりました。 自分の役割は流れを変えることです。また、プレーをしている選手、試合を見てくれている方々に活力を与えたいと思います」

【ミドルブロッカー】
小野寺 太志 25歳/JTサンダーズ
「アスリートならば誰もが目指す舞台に選手として選んでいただき、本当に嬉しく思います。たくさんの方の期待に応えられるよう、日の丸を背負って精一杯戦います。 まずは試合の中でスパイク、ブロック、サーブなどで安定したプレーが求められているので、自分の持ち味を生かしながらプレーしたいです。また、ミドルブロッカーの中でのリーダーシップも発揮していきたいです。 たくさんの方が応援してくれていて、自分に期待してくれているので、地元・宮城県や、被災され今も避難所で暮らしている方々に勇気や感動を与えたいです。スポーツにはその力(人を勇気づけたり感動を与える力)があると思うので、そのことを自分達のプレーや結果で皆さんに証明したいと思います」

【ミドルブロッカー】
山内 晶大 27歳/パナソニックパンサーズ
「日本代表に選出されて嬉しい気持ちといよいよ始まると言う緊張感があります。自分にできる最大限のパフォーマンスを準備していきます。プレーに関しては、クイックとブロックでチームに貢献していきたいと思います。自分の強みを最大限に表現していきたいです」

【ミドルブロッカー】
李 博 30歳/東レアローズ
「東京オリンピックのメンバーとして選出していただき大変光栄に思います。結果を残す為により責任と覚悟を持って戦います。 自分の与えられた役割をしっかりと果たし、常に100%の力を出せるよう準備していきたいと思います。 サーブ、スパイク、ブロックフォローなどの細かいプレー、途中出場の場合はチームの流れを変えられるプレーを期待されていると思うので、それを頭において表現していきたいと思います」

【セッター】
藤井 直伸 29歳/東レアローズ
「初めて日本代表に選んでいただいた時から東京オリンピックに出場したいという思いでここまでやってきたので、素直に嬉しいです。自分自身に後悔がないように、全力で戦いたいと思います。また、これまで一緒に戦ってきた仲間、この一年の重みを痛感し、夢半ばにオリンピックという目標を絶たれた人達の想いも感じて精一杯頑張ります。 クイック、パイプといった真ん中を軸とした速いバレーボールを展開すること、そしてチームの雰囲気を盛り上げたり、鼓舞できるような振る舞いでチームに貢献していきたいです。 震災直後、バレーボールを続けることを諦めた時もありました。そんな時に支えてくれた家族、大学関係者の皆さんには感謝してもしきれません。あの時の支えがなかったら今の自分はありません。そして、いつも温かく迎えてくださる地元の方々。毎回帰省する際にたくさん声をかけていただいて、その度に自分にとっての活力になりました。 たくさんの皆さんの後押しがあったからこそ、今こうして日の丸を背負って戦うことができます。そういった皆さんにバレーボールを通して、今度は自分が少しでも力を与えられるように胸を張って頑張ります」

【セッター】
関田 誠大 27歳/堺ブレイザーズ
「夢であり、目標であったオリンピックへの出場が実現するということで非常に嬉しく思います。それと同時に、これまでの多くの支えがなければ実現できなかったことだと思うので、たくさんの人に感謝したいです。日本の代表としての誇りを持ち、ベストパフォーマンスが出せるように準備していきたいと思います。 ネーションズリーグでは大事な場面での1点の重みをより感じました。日本はディフェンスがかなり重要になってくると思います。サーブはより向上させていく必要があります。 期待されているのはサイドアウトやブレイク時にどれだけ効率をよくしていくかと、ディフェンスだと思います。 どんな場面でも小さなきっかけやプレーの積み重ねで流れは変わってくると思いますので、どんな時も諦めず常に考えてプレーしていきたいと思います」

【リベロ】
山本 智大 26歳/堺ブレイザーズ
「開催国の代表選手として、自覚と責任を持って戦います。プレー面においてはレセプション(サーブレシーブ)の関係性を密にすること、ブロックとディフェンスの徹底をすることを心掛けたいです。ディフェンスにおいてはリーダーとなることが期待されていると思うので、レセプション、ディグ(スパイクレシーブ)、鼓舞する声掛けでチームに貢献していきたいです」

(写真・コメント提供:日本バレーボール協会)

全日本インカレ「組織として日本一」を目指した早稲田大が4連覇を達成

1年間の日々の積み重ねが報われた瞬間。(写真提供:一般財団法人 全日本大学バレーボール連盟)

 11月30日(月)に幕を開けた第73回 秩父宮賜杯全日本バレーボール大学男子選手権大会(ミキプルーンスーパーカレッジバレー2020 )は12月6日(日)に最終日を迎え、早稲田大学がストレートで日本体育大学を下して、4年連続日本一に輝いた。大会を通じて失セット0の完全優勝だった。日本体育大学は、2020年度日本代表の高橋藍(1年/アウトサイド)を攻撃の要に据えて、6年ぶりの決勝戦に臨んだが、セットを奪うことはできなかった。高橋藍は、「高校時代のように、1人の力ではどうにもならない。全員が1つにならなければ、強いチームは完成しない。それを思い知らされた試合だった。今日は自分の力の50%程度。もっと自分自身が力をつけなければいけない」と、話した。

チーム完成度の高さが群を抜いていた早稲田

自信をもって臨んだ決勝戦だったが、早稲田の堅実なバレーを体感し、「学んだことが多かった」と話した高橋藍。(写真提供:一般財団法人 全日本バレーボール連盟)

 日本体育大の山本健之監督が「(早稲田は)チームとしてできあがっている」と話したように、今年の早稲田大は一段と強かった。アウトサイドは大塚達宣(2年/洛南高卒)、水町泰杜(1年/鎮西高卒)、ミドルは村山豪(4年/駿台学園高卒)、上條レイモンド(3年/習志野高卒)、オポジットは宮浦健人(4年/鎮西高卒)、セッターは中村駿介(4年/大塚高卒)、リベロは荒尾怜音(1年/鎮西高卒)と、スタメンはいずれも世代を代表する選手だが、個々の力だけではない。1人ひとりがチームの決まりごとを理解し、チームプレーに徹することができていた。

 例えば、サーブレシーブは大塚、水町、荒尾で担当する。大塚は「昨年と違い、今年は自分が中心となって指示を出す立場。それを全うすることだけを考えていた」という。そのおかげもあって、水町は攻守にのびのびと力を発揮した。「高校時代は自分が決めなければいけない、という思いが強く、被ブロックが多かったが、今は(監督の教えにより)相手のスパイカーと1対1ではなく、1対6という意識で戦っている。難しいボールはリバウンドをとって誰かに決めてもらうなど、自分の役割が見えてきている」と、水町は成長を実感していた。

 チームに指示を出していたのはミドルの村山だ。駿台学園高校時代から、自分たちで考えてプレーしてきた村山は、4年生になるとその能力を大いに発揮。積極的に声を出してゲームを作った。そうした村山の働きに応えるかのように、宮浦はポイントゲッターとして安定感のあるプレーでチームを引っ張った。「自粛期間中から率先してフィジカルトレーニングに取り組み、体がひとまわり大きくなった」という宮浦は、パワーアップしたサーブやスパイクで勝利に貢献した。

個性を認め合い、得意な分野で力を発揮する中で育った自主性

「駿介は明るい性格。チームづくりでもその良さを出してくれていた」と、宮浦が評する、セッターの中村駿介。(写真提供:一般財団法人 全日本バレーボール連盟)

 チームの決まりごとが徹底された背景には、「組織として日本一」というスローガンがある。新チームがスタートする際に、新4年生全員で話し合い、目指すところを言語化したものだ。

「チームスポーツなので、人としてのふるまいやコミュニケーション、あるいは学年の役割などを見直して、しっかりやっていこうということから、この言葉になりました」(村山)

 例年なら春季リーグ戦、東日本インカレを戦い、夏場の強化を経て、秋季リーグ戦に臨む。その集大成となるのが全日本インカレだが、今年はコロナにより大会が相次いで中止となった。モチベーションを保つことが難しかったはずだが、1年次から日本一を成し遂げた先輩の姿を見て育ってきた今年の4年生は耐えた。

「大会中止が伝えられても、(悔しさや不安など、ネガティブな感情を)一切顔に出さなかったのです。その理由を後で聞いたら、『4年生が顔に出したら、3年生以下が何をすればいいのかわからなくなるから』と言っていました。立派だなと思いました」(松井監督)

 互いに個性を認め合い、それぞれが得意な分野でリーダーシップを発揮しながら、チームとしての成長を目指してきた。

 背中で見せるタイプの宮浦は、(活動自粛で)個別に活動しなければいけなくなっても「止まってはいられない。今、できることはなにかと考えて、フィジカルトレーニングや、マインドセットについて書かれた本などを読んで過ごした」という。その考えに至った理由は、早稲田で学んだ1つの考え方にあった。

「試合では、勝ち負けよりも自分たちがやってきたこと、できることを全部出す、ということが求められます。裏を返せば、日々の練習や生活をしっかりやる、ということ。その考えがベースにあったから自然と行動できました」(宮浦)

 村山はチーム強化に積極的に関わった。早稲田大では練習課題を4年生と監督とが話し合って決めるが、「僕が考えている、このチームでこんなことができたらいいね、ということが、村山を中心に4年生からどんどん出てきた。4年生が自分たちで課題を発見し、考えて解決する、そのスキームができたことが、このチームの強みだと思う」と、松井監督。

 日本一が決まった直後のインタビューで監督が感極まったのも、主務やアナリストなどスタッフも含めて、4年生が1つになってチームを牽引し、つかんだ日本一だったからに違いない。

念願の4連覇を果たした早稲田大学。(写真提供:一般財団法人 全日本大学バレーボール連盟)
準優勝は、6年ぶりの決勝のコートで力を尽くした日本体育大学。(写真提供:一般財団法人全日本バレーボール連盟)

【最終結果】

1位 早稲田大学

2位 日本体育大学

3位 日本大学

4位 順天堂大学

ベスト8 近畿大学・明治大学・筑波大学・東海大学

【個人賞】

最優秀選手賞 宮浦 健人(早稲田大4年)

敢闘賞 西村 信(日本体育大4年)

ベストスコアラー賞 高橋 藍(日本体育大1年)

ブロック賞 村山 豪(早稲田大4年)

サーブ賞 宮浦 健人(早稲田大4年)

レシーブ賞 水町 泰杜(早稲田大1年)

セッター賞 中村 駿介(早稲田大4年)

リベロ賞 荒尾 怜音(早稲田大1年)

優秀監督賞 松井 泰二監督(早稲田大)