全日本インカレ「組織として日本一」を目指した早稲田大が4連覇を達成

1年間の日々の積み重ねが報われた瞬間。(写真提供:一般財団法人 全日本大学バレーボール連盟)

 11月30日(月)に幕を開けた第73回 秩父宮賜杯全日本バレーボール大学男子選手権大会(ミキプルーンスーパーカレッジバレー2020 )は12月6日(日)に最終日を迎え、早稲田大学がストレートで日本体育大学を下して、4年連続日本一に輝いた。大会を通じて失セット0の完全優勝だった。日本体育大学は、2020年度日本代表の高橋藍(1年/アウトサイド)を攻撃の要に据えて、6年ぶりの決勝戦に臨んだが、セットを奪うことはできなかった。高橋藍は、「高校時代のように、1人の力ではどうにもならない。全員が1つにならなければ、強いチームは完成しない。それを思い知らされた試合だった。今日は自分の力の50%程度。もっと自分自身が力をつけなければいけない」と、話した。

チーム完成度の高さが群を抜いていた早稲田

自信をもって臨んだ決勝戦だったが、早稲田の堅実なバレーを体感し、「学んだことが多かった」と話した高橋藍。(写真提供:一般財団法人 全日本バレーボール連盟)

 日本体育大の山本健之監督が「(早稲田は)チームとしてできあがっている」と話したように、今年の早稲田大は一段と強かった。アウトサイドは大塚達宣(2年/洛南高卒)、水町泰杜(1年/鎮西高卒)、ミドルは村山豪(4年/駿台学園高卒)、上條レイモンド(3年/習志野高卒)、オポジットは宮浦健人(4年/鎮西高卒)、セッターは中村駿介(4年/大塚高卒)、リベロは荒尾怜音(1年/鎮西高卒)と、スタメンはいずれも世代を代表する選手だが、個々の力だけではない。1人ひとりがチームの決まりごとを理解し、チームプレーに徹することができていた。

 例えば、サーブレシーブは大塚、水町、荒尾で担当する。大塚は「昨年と違い、今年は自分が中心となって指示を出す立場。それを全うすることだけを考えていた」という。そのおかげもあって、水町は攻守にのびのびと力を発揮した。「高校時代は自分が決めなければいけない、という思いが強く、被ブロックが多かったが、今は(監督の教えにより)相手のスパイカーと1対1ではなく、1対6という意識で戦っている。難しいボールはリバウンドをとって誰かに決めてもらうなど、自分の役割が見えてきている」と、水町は成長を実感していた。

 チームに指示を出していたのはミドルの村山だ。駿台学園高校時代から、自分たちで考えてプレーしてきた村山は、4年生になるとその能力を大いに発揮。積極的に声を出してゲームを作った。そうした村山の働きに応えるかのように、宮浦はポイントゲッターとして安定感のあるプレーでチームを引っ張った。「自粛期間中から率先してフィジカルトレーニングに取り組み、体がひとまわり大きくなった」という宮浦は、パワーアップしたサーブやスパイクで勝利に貢献した。

個性を認め合い、得意な分野で力を発揮する中で育った自主性

「駿介は明るい性格。チームづくりでもその良さを出してくれていた」と、宮浦が評する、セッターの中村駿介。(写真提供:一般財団法人 全日本バレーボール連盟)

 チームの決まりごとが徹底された背景には、「組織として日本一」というスローガンがある。新チームがスタートする際に、新4年生全員で話し合い、目指すところを言語化したものだ。

「チームスポーツなので、人としてのふるまいやコミュニケーション、あるいは学年の役割などを見直して、しっかりやっていこうということから、この言葉になりました」(村山)

 例年なら春季リーグ戦、東日本インカレを戦い、夏場の強化を経て、秋季リーグ戦に臨む。その集大成となるのが全日本インカレだが、今年はコロナにより大会が相次いで中止となった。モチベーションを保つことが難しかったはずだが、1年次から日本一を成し遂げた先輩の姿を見て育ってきた今年の4年生は耐えた。

「大会中止が伝えられても、(悔しさや不安など、ネガティブな感情を)一切顔に出さなかったのです。その理由を後で聞いたら、『4年生が顔に出したら、3年生以下が何をすればいいのかわからなくなるから』と言っていました。立派だなと思いました」(松井監督)

 互いに個性を認め合い、それぞれが得意な分野でリーダーシップを発揮しながら、チームとしての成長を目指してきた。

 背中で見せるタイプの宮浦は、(活動自粛で)個別に活動しなければいけなくなっても「止まってはいられない。今、できることはなにかと考えて、フィジカルトレーニングや、マインドセットについて書かれた本などを読んで過ごした」という。その考えに至った理由は、早稲田で学んだ1つの考え方にあった。

「試合では、勝ち負けよりも自分たちがやってきたこと、できることを全部出す、ということが求められます。裏を返せば、日々の練習や生活をしっかりやる、ということ。その考えがベースにあったから自然と行動できました」(宮浦)

 村山はチーム強化に積極的に関わった。早稲田大では練習課題を4年生と監督とが話し合って決めるが、「僕が考えている、このチームでこんなことができたらいいね、ということが、村山を中心に4年生からどんどん出てきた。4年生が自分たちで課題を発見し、考えて解決する、そのスキームができたことが、このチームの強みだと思う」と、松井監督。

 日本一が決まった直後のインタビューで監督が感極まったのも、主務やアナリストなどスタッフも含めて、4年生が1つになってチームを牽引し、つかんだ日本一だったからに違いない。

念願の4連覇を果たした早稲田大学。(写真提供:一般財団法人 全日本大学バレーボール連盟)
準優勝は、6年ぶりの決勝のコートで力を尽くした日本体育大学。(写真提供:一般財団法人全日本バレーボール連盟)

【最終結果】

1位 早稲田大学

2位 日本体育大学

3位 日本大学

4位 順天堂大学

ベスト8 近畿大学・明治大学・筑波大学・東海大学

【個人賞】

最優秀選手賞 宮浦 健人(早稲田大4年)

敢闘賞 西村 信(日本体育大4年)

ベストスコアラー賞 高橋 藍(日本体育大1年)

ブロック賞 村山 豪(早稲田大4年)

サーブ賞 宮浦 健人(早稲田大4年)

レシーブ賞 水町 泰杜(早稲田大1年)

セッター賞 中村 駿介(早稲田大4年)

リベロ賞 荒尾 怜音(早稲田大1年)

優秀監督賞 松井 泰二監督(早稲田大)

関東勢が強さを発揮。不戦勝の近大が関東以外で唯一準々決勝へ

第73回 秩父宮賜杯全日本バレーボール大学男子選手権大会(ミキプルーンスーパーカレッジバレー2020 )は3日目を迎え、3回戦、全8試合が行われた。大阪産業大が早稲田大に、福山平成大が日本大に、愛知学院大が東海大に敗れてベスト16に終わったが、岐阜協立大学が棄権したため不戦勝となった近畿大が、関東以外の大学で唯一、12月3日(木)に行われる準々決勝へ駒を進めた。

4年連続日本一を目指す早稲田大。3回戦も大阪産業大に完勝して準々決勝へ。

この日、もっとも激戦となったのは福山平成大対日本大の一戦だ。福山平成大は三好佳介(4年/アウトサイド/高松工芸高卒)、日本大は高橋藍(日本体育大1年/アウトサイド/2020年度日本代表)の兄、高橋塁(3年/アウトサイド/東山高卒)がチームを牽引し、第1セットから両者譲らず、互角の戦いとなった。しかし、日本大学が1、2セットを連取。第3セットも出だし良く、大きくリードした際はこのまま走ってゲームを決めるかに見えたが、中盤で福山平成大が意地を見せた。相手のブレイクを許さず、徐々に点差を詰めていき、逆転でこのセットを奪うと、勢いそのままに第4セットも連取した。第5セットに入っても両者が攻守に力を発揮し、熱戦が続いたが、日本大がブレイクを重ねる一方、福山平成大は思うようにブレイクできず。その差が埋まらないまま第5セットを奪った日本大が勝利した。結果的に、関東以外の大学では不戦勝の近畿大が唯一準々決勝に駒を進める形となった。

12月3日(木)、最大の見どころは、筑波大対日本体育大の一戦だろう。筑波大は坂下純也(4年/アウトサイド/駿台学園高卒)、垂水優芽(2年/アウトサイド/洛南高卒)、西川馨太郎(2年/ミドル/清風高卒)ら、日本体育大は西村信(4年/アウトサイド/高川学園高卒)、市川健太(3年/リベロ/大村工高卒)、高橋藍(1年/東山高卒)ら、どちらも高校時代から逸材ぶりを発揮するメンバー揃い。個々の力もさることながら、ベンチワークに長けた両チームだけに、どのような戦略で臨むのかも楽しみだ。

【3回戦 試合結果】

早稲田大学 3-0 大阪産業大学

近畿大学 不戦勝 岐阜協立大学

順天堂大学 3-0 亜細亜大学

明治大学 3-0 国士舘大学

筑波大学 3-0 大東文化大学

日本体育大学 3-0 国際武道大学

日本大学 3-2 福山平成大学

東海大学 3-0 愛知学院大学

【準々決勝 対戦カード】

早稲田大学 vs 近畿大学 11時試合開始 DAZNで視聴できます

日本大学 vs 東海大学 11時試合開始 ユニバスで視聴できます

順天堂大学 vs 明治大学 14時半試合開始 DAZNで視聴できます

筑波大学 vs 日本体育大学 14時半試合開始 ユニバスで視聴できます

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