
10月17日(土)に幕を開けたVリーグ(V1男子)は、レギュラーラウンド(4回戦総当たり)を熱戦中。現在、全チームが10試合、同一カードを2試合ずつ戦い、下記のような順位となっている。試合が1週空いて、どのような調整が行われたのか。11月27日(金)・28日(土)に行われる次戦が楽しみだ。
1位 ウルフドッグス名古屋 8勝2敗 23ポイント 2.17%
2位 パナソニックパンサーズ 8勝2敗 23ポイント 2.00%
3位 サントリーサンバーズ 8勝2敗 23ポイント 1.80%
4位 JTサンダーズ広島 7勝3敗 21ポイント
5位 ジェイテクトSTINGS 7勝3敗 18ポイント
6位 堺ブレイザーズ 5勝5敗 16ポイント
7位 東レアローズ 5勝5敗 14ポイント
8位 FC東京 2勝8敗
9位 VC長野 0勝10敗 2ポイント 0.27%
10位 大分三好ヴァイセアドラー 0勝10敗 2ポイント 0.17%
※勝敗が同じ場合、ポイント、セット率により順位を決定(11月15日終了時)
クレクの働きで取り戻した「自信」
昨シーズンの上位チームを抑えてトップに立つウルフドッグス名古屋(以下、WD名古屋)は、精度の高いトータルディフェンスとオポジットの攻撃力が特色のチームだ。
クリスティアンソン・アンデッシュ前監督が、チームコンセプトに基づいたチームバレーを根づかせて、2015/16シーズン(当時は豊田合成)に初優勝。その後も準優勝2回と強豪チームに成長させた。その間に、ティリカイネン・トミー監督を迎えて、二人三脚でチーム強化に取り組んできたが、2018-19シーズンを最後にアンデッシュ前監督が勇退。新時代を担うであろう、学生時代に国際大会を経験している4選手(高梨健太、永露元稀、小川智大、勝岡将斗)が入団し、トミー監督のもと、コーポレートクラブハイブリッドチーム「ウルフドッグス名古屋」として新たな一歩を踏み出した昨シーズンだったが、7位に終わった。新体育館が完成した今シーズン、なんとしても結果を出したい、という思いは、世界屈指の主砲、クレク・バルトシュ(ポーランド代表/オポジット)の獲得に表れている。入国から14日間、待機生活を送り、開幕の3日前にチームに合流。急ごしらえのチームで開幕週はサントリーに連敗したが、翌週から負け知らずの8連勝でトップに躍り出た。

その日の会見で、アンデッシュ前監督時代から、トータルディフェンスの要として厚い信頼を得ている近裕崇(ミドルブロッカー/キャプテン)は、「ブロックでボールが抜けたり、ボールをタッチしたりした時に、(リベロが)いるよね、という感覚が昨季よりも強い気がする」と、手応えを口にした。
「昨シーズンはトミー監督が思い描いているバレーを体現できなかったのですが、今年は練習を積んで、練習の時からそれができてきている実感がありました。また、クレク選手がリーダーシップをとって、チームに自信を与えてくれています。それもチームが好調な要因だと思います」
そう話すのは、今シーズン、スタメン起用されているリベロの小川智大だ。今年はスピンサーブへの対応と、サーブレシーブのフォーム改善に取り組んできたという。自分のこだわりを捨てて猛練習した成果が今、数字に表れて、サーブレシーブ成功率ランキングでトップ(76.3%/11月15日終了時)に立っている。サーブレシーブの場面では、セッターの攻撃プランに応じて、誰がレシーブするのがベストなのかを考え、(サーブレシーブを担当するアウトサイドの選手に)指示を出していると言うが、チームのサーブレシーブ成功率も現在1位(60.6%/11月15日終了時)で、ベンチの信頼を獲得している。
「(セッターが攻撃させたい選手に)できるだけフリーで打たせたいから」と小川。そのため、後衛のアウトサイドの選手と小川がレシーブに入るという選択をして「パイプが弱くなるケースもある」と言う。そうした駆け引きをコート上の選手たちがコミュニケーションを取りながら、場面に応じてよりよい選択をし、得点に結びつく行動をとる、という文化が根づいているのがWD名古屋の強みだ。キャプテン近も、「(攻撃の場面では)僕に相手のマークがつくことが第一。他の選手が助かるから」と献身的なプレーに徹する。その背中が道標となってチームは1つになりつつある。

さらにクレクが、総得点ランキング1位(272点/11月15日終了時)の働きにとどまらず、コート外でも積極的に選手にかかわることにより、チームは自信を取り戻している。エースに成長中の高梨健太や、サントリーの柳田将洋とともに春高バレーを沸かせた山田脩造(共にアウトサイド)も、非凡な能力を発揮していて頼もしい。
レギュラーラウンドはまだ序盤だが、今シーズン、WD名古屋が台風の目となって、順位争いに大きな影響を与えそうな様相。本日のナイトゲームを含め、今週末以降の戦いに大いに注目したい。
【11月27日(金)・28日(土)の対戦カード】
大阪(大阪市)サントリー vs JT広島
【11月28日(土)・29日(日)の対戦カード】
愛知(稲沢市)WD名古屋 vs 大分三好
長野(松本市)VC長野 vs パナソニック
静岡(静岡市)東レ vs 堺 ジェイテクト vs FC東京
文・金子裕美