WD名古屋:引退の内山正平×高松卓矢が後輩にエール

4月18日に引退セレモニーを行った内山(左)と高松

豊田合成トレフェルサをVリーグ初優勝(2015/16シーズン)へと導いたクリティアンソン・アンデッシュ前監督のもと、主力メンバーとして活躍した内山正平(セッター)、高松卓矢(アウトサイドヒッター)が今シーズンを最後にコートを去った。

2人は2010年に入団。2013年にアンデッシュ氏が監督に就任すると、英語習得に四苦八苦しながらも、同氏のバレーボールに対する考え方に傾倒し、力をつけて豊田合成トレフェルサの黄金期を築いた。2018年より、チームはティリカイネン・トミー監督(2020-21シーズンで退団)に引き継がれ、クラブ化に伴い、2019-20シーズンよりチーム名をウルフドッグス名古屋(以下、WD名古屋)に変更。環境が変化する中で前田一誠(セッター)、高梨健太(アウトサイドヒッター)、小川智大(リベロ)らが成長し、今季、高松は大分三好ヴァイセアドラー(期限付き移籍)でプレーしていた。

4月18日(日)に豊田合成記念体育館エントリオで引退セレモニーを行った高松と内山に心境を聞いた。

チームメイトの手で中に舞う内山

「自分史上初の優勝に号泣」(内山)

--入団から11年。引退を決意したのはいつ頃でしたか。

内山 自分の中では、天皇杯(2015年)やVリーグで優勝したり(2015/16シーズン)栄誉賞を獲ったり(2020年1月)して、気持ちの上で一区切りついたのは2019-20シーズン後でした。でも、コロナ禍でファンのみなさんにサヨナラを言えない状況でした。Vリーグで10年間やってきて、きちんと終わりを迎えたい、という気持ちがあったので、もう1シーズン、チームに残り、サポートをメインに取り組んで、きちんと終わりを迎えることを目標に過ごしてきました。

高松 僕は「ウッチー(内山選手)が引退セレモニーを行うにあたり、「1人じゃ寂しいから一緒に引退してくれない?」って言われて決めました。

内山 (爆笑)

高松 (笑)「燃え尽きました」って言えばいいのかなぁ。いや、まだ、完全に燃え尽きたわけではないけれど、頼もしい後輩が増えて、チームの中で自分ができることはないな、と感じたことがきっかけですね。

--引退後はどうするのですか。

内山 僕はバレーボールから離れて、豊田合成の社員として働きます。

高松 僕も同じです。もともと会社員なので、これからは新たなフィールドで頑張ります。

--11年間の選手生活で一番印象に残っていることを教えてください。

内山 僕は2015年の天皇杯初優勝ですね。自分が生きてきた中で、ちゃんと一番を獲ったことがなかったから。あの時は3ヶ月後にVリーグで優勝した時以上に泣きました。

高松 僕は2017/18シーズンのVリーグファイナルです。僕は大学時代もこのチームに入ってからも日本一になっていますけど、どの優勝も僕の前にすごい先輩方がいて、支えられて成し遂げることができたものなんです。自分としては、小学生の時にバレーボールを始めてから今まで、納得できるシーズンは一度もありません。豊田合成でリーグ優勝した時もイゴール(・オムルチェン)がいて、古賀(幸一郎)さんがいて、アンデッシュがいて。しかも僕は優勝の瞬間、コートに立っていませんでした。自分の力で獲ったぞ、優勝できたぞ、というシーズンが一度もない、ということがずっと自分の中にありました。

2017/18シーズンのVリーグファイナルは、パナソニックに負けてしまったのですが、イゴールが足を痛めていて調子が上がって来ませんでした。逆に僕はめちゃめちゃ調子がよくて、相当点数を取っていました。もし優勝できていたら「悔いはなかった」と言えるのですが…。結局、あの試合でも僕はサービスエースを2本取った後にミスしてしまい、チームを優勝に導くことはできませんでした。そういうことも含めて、一番印象に残っています。

チームメイトの手で中に舞う高松

「アンデッシュはリアリスト、トミーはロマンティスト」(高松)

--アンデッシュ監督からトミー監督へチームが引き継がれて3年目。今シーズンのWD名古屋は前回の7位から3位に躍進しました。チームに変化を感じた部分があれば教えてください。

内山 僕は選手が変わらなければバレーは変わらないと思っていたので、アンデッシュが来て、監督でバレーが変わったことに衝撃を受けました。アンデッシュの時代が5年くらい続いて、その後、トミーがチームを引き継いだわけですけど、アンデッシュのコンセプトがチームに根づいていたから、しばらくはそれに引っ張られている感じがありました。「こうしたらいい」という個々の考えが、いろいろなところでぶつかり合っていた時期があって、トミーもやりにくかったんじゃないかな。変えたくてもピンポイントで変えていくしかなくて、今シーズンやっとトミーの考えが浸透し、やりたいバレーができたんじゃないかなと思います

高松 そもそもアンデッシュとトミーのバレーは本質的なところが全く違うんですよね。

内山 そうだね。バレーボールにもトレンドがあって、戦術が変わります。たぶんトミーのバレーが今の世界のトレンドで、僕らが優勝した頃のバレーでは、今は通用しないと思います。

高松 アンデッシュは時間や数字を大切にします。時間内にどれだけ効率的に、合理的にバレーボールができるかがビッグコンセプトでしたけど、トミーは数字だけでなく、将来性であったり、ウッチーが言った世界のトレンドであったり。新しいものにも目を向けていました。言い方を変えるとアンデッシュはリアリスト、トミーはロマンティストなんです。だからアンデッシュと一緒にやってきた選手は「この時期にこんな練習するの?」と思うこともありますし、アンデッシュとやっていない若い選手は、トミーのバレーを新鮮に感じて、すんなり入れたんじゃないかと思います。

メンバーの入れ替えはどのスポーツでも、どのチームでも起こり得ることです。僕らが入団した時も、盛重さんや高橋和人さんらに代わって僕らが入りました。チームにとってメンバーの入れ替えができることはいいことだと思います。

中国との親善試合と、翌週の紅白戦で日本代表として存在感を示した高梨(上)と小川。共に19年4月にWD名古屋に入団した期待の選手

「小川、高梨のポテンシャルとひたむきさに感服」(内山)

--若い選手たちをどう見ていますか。

高松 これはウッチーも同意見だと思うけど、僕らの1年目よりはるかにプレーができていますよ。本当にすごい。

内山 ポテンシャルがやばい。僕が今、入団したら試合に出られなかったと思います。

高松 リリーフサーバーでも出られないな。もともとサーブが弱かったから(笑)。ごめん。

内山 本当に無理だと思う。

--練習に対する姿勢や取り組み方についてはいかがですか。

内山 向上心がめちゃくちゃあります。みんな、普段からデータや自分のプレーの映像を見て、どうすればうまくなるかを考えています。特に小川、高梨はすごく見ます。それが今シーズンの成績につながったのだと思います。あのポテンシャルであのひたむきさがあれば(日本代表に)行くよね、という感じです。

--セッターの永露元稀選手も将来が期待されていますよね。

内山 彼も僕らの1年目と比べたらポテンシャルは高いですよ。サーブもいい。

高松 ブロックもいい。ディグもいい。ツー攻撃もいい。顔もいい。あとは永露が自分の武器に気づいて有効活用できるかどうかだね。

内山 (永露は)1年目から出してもらっているので、これから先は自分でレギュラーを獲る、という強い気持ちで頑張ってほしいですね。(Vリーグは)上が引退すればチャンスが巡ってくる、というほど甘くない。(前田)一誠がすごいのは、なかなか出番が回って来なかったけど、挫けずに練習を重ねてきたこと。

高松 そうだね。

内山 若いうちならたくさん失敗しても長い目で見てもらえるけど、途中からだとそうはいかない中でレギュラーを勝ち取った一誠はすごいなと思います。

豊田合成トレフェルサ時代からの戦友、近 裕崇(中央)と記念撮影

「自分の可能性を信じて、考え抜くことが大事」(高松)

高松 僕らの場合、プロ選手じゃないじゃないですか。安全が補償されている中でバレーボールができるので、それに甘んじてしまったら成長も止まってしまいます。どれだけハングリー精神を持ってバレーボールに打ち込むことができるかが課題なんです。自分で自分の限界を決めてしまったら練習に身が入らなくなるので、若い選手には気概を持って取り組んでほしいですね。

内山 バレーボールに対する思いはあっても、その思いを体現できないと伝わらないので、そういう面で損している選手もいますね。

高松 ポテンシャルがある人の弊害は、ポテンシャルである程度できてしまうということなんですよ。Vリーグで戦うにはポテンシャルがある上に努力が必要です。身体能力だけではダメ。跳ぶだけではダメ。

内山 痛感したもんな。それすらもなかったから。

高松 大学時代にやってきたことが(Vリーグでは)通用しないんですよね。僕も速いのを打たんといけんね、と思って練習したんですけど、速いのも決まらない。なんで? ってなっていました。わからなくなっていた時にアンデッシュが来て「なぜ、そういう打ち方をするの? 」と聞かれました。パソコンを持って来て「お前、どこにいるの? 」と言うので画面を見ると、ラリー中にいないんですよ。

--画角に入っていないということ?

高松 そうそう。スパイクを打つ時に開きすぎていて、そこを指摘されました。トスがショートしたら打てないくらい開いていて、アプローチから変えなければいけなかったんだ、と気づかされました。自分のプレーの何が悪いのかを理論的に説明する人が来てくれたからここまでできましたけど、当時の僕は理論的ではなかったので、アンデッシュには本当に感謝しています。

内山 数をこなすタイプだったね。「ラスト」の声がかかってからどれだけ長かったか。

高松 なあ。1時間くらいかかってたもんな。そこにアンデッシュが来て、いろいろなことを教えてもらいました。ミスをすると「なぜ、そうなったのかを考えろ」と言われて、それを紐解く。そして、ミスをしないために必要なことを確認する。必要な練習だけでなく、トレーニングや食事までつながっていることに気づけたことが、ここまでできた要因です。

--どんな成果でも、失敗からいかに学ぶかが大切なんですね。

高松 ミスしたら「次はミスをしないようにしよう」と思いますよね。そう思っても同じミスをしてしまうのは、思うだけで終わっているからなんです。例えばパイプを打てなかった時に、アプローチが悪かったのか。打ち方が悪かったのか。リズムが悪かったのか…。それこそ映像を見て確認して、原因を突き止めて、次の練習で修正していけば改善されていくのですが、伸び悩んでいる選手はおそらくそういうことをしていないと思います。

内山 パイプが打てない時に、もう打たない、という選択をしていたら、一向に良くなっていかないと思うので、そこで一踏ん張りしてほしいですね。

高松 ミスの原因を自分で紐解いていけるようになると変わると思うので、向上心をもって頑張ってほしいです。

最後の紅白戦でチームメイトとしてコートに立ったふたり

高松卓矢 1988年1月8日生まれ(33歳)/別府鶴見丘高校→日本体育大学→2010年豊田合成トレフェルサに入団/2013年、2017年、2018年日本代表。2018アジア大会日本代表

内山正平 1987年11月1日生まれ(33歳)/東洋高校→国際武道大学→2010年豊田合成トレフェルサに入団/2014アジア大会日本代表

取材/馬場 誠 構成/金子裕美

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