福岡・長野で行われているバレーボールのワールドカップ2019男子大会は、10月4日(金)に第3戦を行い、日本はチュニジアに3-0(25-23、25-21、25-11)で勝利し、2勝目をあげた。ポーランドに敗れた第2戦の課題を、一人ひとりが修正しての勝利に、今後の戦いがますます楽しみになった。
中央からの攻撃<クイックとパイプ>を軸に、相手を揺さぶるバレーができるかが勝負の鍵
日本にとってチュニジアは格下の相手だが、1、2戦目のリベロ、山本智大に代わり、古賀太一郎をスタートから起用しただけで、スタメンは1、2戦目と変わらなかった。そこには「選手の力は試したいが、しっかり勝たなければいけない」というチームの意図があった。
チュニジアの力強い攻撃に第1セットは苦戦したが、日本が崩れることなく逃げ切ることができたのは、セッター関田誠大が「クイックや、ミドルをおとりにしたパイプ攻撃を軸に、トスを散らせる」という信条を守り抜いたことが大きい。
もともとトスの正確さと動きの速さには定評がある。サーブレシーブにしても、ディグにしても、どこに上がるかがわからない中で、瞬時に反応し、しっかりとボールの下に入って、クイックやパイプを仕掛ける。サイドのアタッカーに対しても、高いコミュニケーション能力と技術力でアタッカーが要求するトスに応え、相手のブロックが完成する前に打てる状況を作ろうと努力している。ポーランド戦では威圧感のあるブロックに苦戦した西田有志も、この日はチーム最多得点(スパイクでは14得点)で喜びを爆発させた。
途中出場の選手も躍動した。大会が始まる5日前、アジア選手権のメンバーに、久原翼、大竹壱青を加えた16名でワールドカップを戦うことが発表された時、関田は「ワールドカップは試合が続くからチーム全員で戦うことになると思う。誰がコートに立っても日本のバレーができるように、(福岡で合流する2人も含め)コンビをしっかり合わせておかなければいけない」と話していた。この日はメンバー交代が多かったが、それでも変わりなく日本のバレーを展開できたことは、今後につながる収穫と言える。

サーブが持ち味の柳田が、西田が、李が力を発揮。やはりサーブで崩すことができた時の日本は強い
ポーランド戦では、攻めることを意識しすぎてかサーブミスが多く、ゲームの流れを引き寄せることができなかったが、この日は一転。日本チームの中でも得点力の高いサーブをもつ柳田(4得点)、西田(2得点)、李(3得点)がサービスエースを奪うことにより、チュニジアの勢いを止めることができた。特に、第3セット14-9から、4本連続サービスエースを奪った柳田には驚かされた。ジャンプサーブはトスの精度が重要と言われるが、その技術力と精神力、さらには体の動きが一体化した、もはや芸術品だ。
柳田、西田、石川らジャンプサーブ陣だけでなく、ミドルブロッカーのジャンプフローターでも得点できるようになったのは、李の功績が大きい。いち早くサーブの強化に取り組み、高い打点から放つジャンプフローターサーブを確立。それが武器の1つとなって日本代表に定着したが、今シーズンは新ボールの特徴を活かせる打ち方ができる小野寺太志にお株を奪われてきた。小野寺の台頭により、スタメン争いを余儀なくされた山内晶大もサーブに磨きをかけており、李の影が若干薄くなっている。その悔しさをバネに新ボールの特徴をつかもうと練習に励んできた成果がチュニジア戦で出た。途中出場ながらサーブで3得点を奪った李の活躍により、他のミドルブロッカーが奮起することは必至で、チームに勢いを与えそうだ。
リベロの山本が「日本バレーの起点はサーブ。サーブで攻めて、相手の攻撃を絞り込みしっかりブロックにつくことができないと(守備範囲が広すぎて)僕らも力を発揮できない」と話すように、コンスタントに日本のバレーを展開するには、サーブを意図したところに打つことと、ミスを続けないことが非常に重要になる。それを改めて実感できたことも、チュニジア戦の収穫と言える。
今日の対戦相手、アメリカ(2015ワールドカップ金メダル・2016リオ五輪銅メダル・世界ランク2位)に対しても、やるべきことは中央からの攻撃<クイックとパイプ>を軸にしたバレー。関田は「アメリカはブロックのいいチームなので、いかにトスを散らせるかがポイントになる」と話す。チュニジア戦で得たものを、世界の強豪を相手に実践できれば本物の力になる。今日はそこに注目して観戦したい。
