スーパープレーに見た日本の強さ

「ちょっとやばくない?」

イタリア戦を前にした公式練習時に、コートサイドで隣り合わせた顔なじみのカメラマンと目を見合わせて、思わず出た言葉だ。この日の日本代表選手は、目を疑うほどにジャンプしていた。特に石川祐希西田有志、山内晶大、小野寺太志、高橋健太郎のジャンプが尋常ではなく、「そんなに跳んだらケガをしてしまうのでは?」と思うほどだった。同時に、他の選手たちのコンディションの良さも見て取れて、より期待感が高まった。

今シーズンの公式戦を最後に見たのはドイツ・ライプツィヒでのネーションズリーグ最終節だ。この3連戦で2勝をあげて昨年を上回る成績(7勝8敗)を残したが、世界ランキングTOP10からの勝ち星はアルゼンチン(7位)とセルビア(10位)にとどまった。日本は明らかに前年よりも進化していて、トランジションアタックの本数は増えていたが、得点に結びつかないシーンが数多く見られ、それが強豪国に勝ちきれない原因の1つとなっていた。キャプテンの柳田将洋は「これまではチームとしてのまとまりを求めてやってきた。それはある程度できたが、つないだボールを得点するためには個の強化が必要」と話していた。
チームとしても、相手のブロックが完成する前に打てるよう、よりスピード感のある攻撃を追求する方針で、練習を重ねた。8月に行われたカナダとの国際親善試合では、サイドへのトスやビック(bick。back row quickの略で、パイプよりも速いバックアタック)の精度が上がり、各スパイカーがそれぞれ工夫して攻撃しているように見えた。簡単にブロックされたり、それを避けてアウトにしたりするケースは明らかに減ったが、柳田らアウトサイドヒッターはまだ手応えを感じていなかった。ワールドカップ直前の会見で、柳田は「これまでにない速さを追求するあまり、どのシチュエーションでも速いトスを供給してもらおうという心理が先行し、盲点となっていた部分があった」と明かした。「フィリップ(ブラン)コーチから、(ラリーのなかで)無理して速いトスをもらうよりも、しっかりボールをたたく状況を作ることが大切。状況によってはアタックラインの中でもハイボールを要求してもいいのでは?と言われて、腑に落ちたという。「アジア選手権では、石川にしても自分にしてもそこを判断しながらトスを求めることができるようになったので、それはワールドカップでも体現できると思う」と話していた。もう1つ、アジア選手権の収穫として、トランジションアタックへの手応えをほのめかしていた。「アジアの強豪に対して、サーブでプレッシャーをかけた後、(こちらの)ディフェンスが(データやシステムなどにより)つながるようになり得点する場面が多かった。ワールドカップでも連続得点して勝っていくというバレーを展開したい」と話していた。

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あのスーパーラリーをふりかえる

 そして昨日、開幕戦を迎えた日本は、たくさんの観客の声援を力に、これまで積み重ねてきた力を遺憾なく発揮し、素晴らしいバレーを見せた。誰一人として手を抜くことなく、貪欲に、しかしながら冷静に1点を取りに行った。第2セット23-18の場面で飛び出したこのスーパープレーは、その象徴とも言える。
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このラリー、石川がヌガペったプレー(ツーアタックと見せてのトスアップ。フランスのヌガペト選手がよく見せるプレーで、いつしかこう呼ばれるようになった)に目を奪われがちだが、それ以前に素晴らしいプレーが重なってのこのプレーだった。まずはリベロ山本智大のディグだが、これを可能にしたのが小野寺と福澤達哉によるブロックだ。イタリアのサーブレシーブは大きめで、前衛セッターのツーアタックも含めて5人が攻撃を仕掛けてきたが、2人はしっかりとボールの行方を見てライトからのバックアタックに付いた。しかも、クロスのコースを締めているため、山本からは完全にスパイカーが見えている。これが1本目のディグにつながった。次のレフトからの攻撃に対しても、しっかりと2枚ブロックを敢行し、相手にフェイントをさせた。あれだけの強打を受けた直後にフェイントに反応した山本の能力の高さもさることながら、それをトスにした関田誠大のスライディングアンダーセットも、ボールの下に入るスピードが速い関田の真骨頂だ。そのボールはレフトへ。フェイントに反応して一度膝をつき、万全なジャンプができなかった福澤の冷静なリバウンドも絶妙だった。簡単にやっているように見えるが、ブロックに当てるタイミング、場所を間違えるとはたき落とされてしまう難しいプレーだ。それを関田がフォローし、石川のあのトスへと続く。このセット序盤に一度ツータックを見せていたことに加え、ギリギリまでスパイクフォームを維持していたこともあり、イタリアの2人のブロッカーは完全に石川につられた。トスの質も完璧。西田は思いきりたたくだけだった。
このラリーの中で見られたすべてのプレーは、いうまでもなく練習の賜物だ。何度も何度も練習し、話し合い、1点を取るために努力をしてきた証。それ故に、相手ブロッカーが石川につられ、上がったトスが完璧だったのを見た時点で関田は両手を挙げて走り出している。西田がスパイクを放つ前にだ。

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“速いバレー”を実現するために重要な関田選手。合宿中も遅くまで残って黙々とトス練習をする姿が印象的だった

 

イタリアはベストメンバーではなかった。数日前までヨーロッパ選手権を戦っていて、早めに来日して調整する時間的余裕もなかった。とはいえイタリアリーグをはじめとするプロリーグで活躍する選手ばかり。これまで出場機会が少なかった選手にとって、ワールドカップは東京五輪のメンバー選考に向けてアピールの場であると同時に、プロ選手として世界のクラブに売り込むためのチャンスでもある。ネーションズリーグでは今回とほぼ同じメンバー(14人中11人が同じ)に1-3で敗れている。「気が緩んだらやられる。締めていこう」と石川がチームメイトに声をかけ続けたように、侮れない相手であることは確かだ。そのチームに完勝したことで、間違いなくチームに弾みがついた。今夜の相手、ポーランドもベストメンバーではない。ベンチ入りしているメンバーは12人。広島から合流するクビアクらの席を空けている。とはいえ昨年の世界選手権優勝チーム。今夜も難敵だが、積み重ねてきたすべての力を尽くして、勝利をものにして欲しい。

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攻守の両方が求められるアウトサイドヒッターの福澤選手と石川選手。このポジションの選手が機能しなければ強さは発揮できない

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