バレーボールにおけるポジションごとの特性と役割~その2 アウトサイドヒッター編~

今月22日、ワールドカップ女子大会で日本代表をフルセットで破ったアメリカの指揮を執っていたのがカーチ・キライ監督。インドアで2つ(84年ロサンゼルス、88年ソウル)、ビーチで1つ(96年アトランタ)、計3つのオリンピック金メダルを獲得し、「ミスターバレーボール」と呼ばれた選手でした。その「ミスター」がインドアバレーで務めたポジションが“アウトサイドヒッター”です。
第二回の今回はそのアウトサイドヒッター(以下OH)について解説します。

全ての技術が求められるオールラウンダー

 カーチ・キライ氏が「ミスター」と呼ばれた所以は、何も金メダルチームのキャプテンを務めたからではありません。80年代に入ってアメリカチームが構築した戦術が「分業制」。それまではセッターを除く4(前衛のミドルブロッカーを外した場合)~5人でサーブレシーブをし、前衛の2~3人が攻撃するというシステムが一般的だったのに対し、2人のOHが全てのサーブに対応し、セッター対角の選手は後衛でも攻撃に専念させる戦術を実戦したのです。そのシステムを完成させる重要な役割を担ったのがカーチ・キライ選手でした。サーブレシーブをし、そこから攻撃に入り、相手のスパイクにも負けないレシーブ力を持っているオールラウンダーでした。まさにバレーボールに必要な全てのプレーの技術力が高く、さらにチームをまとめる統率力のあるリーダーだったからこそ「ミスターバレーボール」と呼ばれたのです。

それから20年以上が経ち、現在のバレーボールはさらに進化しています。その中でOHの役割は当時以上に重要になってきました。現在のバレーでは両OHとリベロ(98年に正式採用)の3人で行うのが一般的。「80年代は2人で今は3人なら、今のほうがラクじゃん!」と思った方もいるかもしれませんが、今の方が重要でキツいポジションなのです。理由は、
・当時よりサーブが進化している。
・当時はサーブを直接ブロックすることが認められていて(89年に禁止)、ネットすれすれのジャンプサーブは前衛のミドルブロッカー(当時はセンターといわれていた。以下MB)が止めてくれたことにより、サーブレシーブの範囲が狭かった。
・現在のバレーボールでは後衛のOHも常にパイプ(pipe。センターからのバックアタック)やビック(bick。back row quickの略で、パイプよりも速いバックアタック)に入らなければならず、6つのローテーション全てで守備と攻撃に参加しなければならない。
などが挙げられます。

さらに最近では、セッターが1本目のボールを取った際にセンターのバックアタックが打てるところに上げ、それを後衛のOHが2本目で打ったり、打つふりをしてサイドにトスを上げたりするプレーが増えており、稀にではありますがセッターのようなプレーが求められる場合もあります。

同じOHでも役割は微妙に違う

 バレーボールではOHとMBは対角で2人ずつがコートに入ります。図Aはセッターがサーブのポジションにいる時(S1ローテーションといいます)を表したもので、1番がセッター、2番と5番がOHとなります。同じOHでも2番と5番では求められる能力、技術、役割が若干違います。
図Bは6つのローテーションでの一般的なサーブレシーブの陣形です。バレーボールではサーブが打たれる瞬間まで、前後の選手と左右の選手との位置関係を崩すことはできません。5番の選手はサーブレシーブを真ん中で構える場面が1度しかありません。ですから、守備面より攻撃面が得意な選手が入るのが一般的です。逆に2番の選手は真ん中で受ける場面が2回あります。ですから、守備的要素が必要になりますが、セッターと並んでいるため、前衛での攻撃枚数が2枚という場面が2回あります。そのため守備も攻撃もできる、よりオールラウンダーな選手が望ましいといえます。

男子日本代表チームでは、石川祐希選手が2番に入っています。S1ローテーションではライトから攻撃することになりますが、攻撃力の高い石川選手が入ることで、サイドアウト(サーブ権を持っていないチームが得点すること)率が高まりました。
OHはサーブを打った以降はレフトにポジショニングすることがほとんどです。つまり、ライトにいる相手のオポジット(セッター対角に入る得点をすることを求められるスパイカー。その4で解説予定)と相対することが多く、ブロック力も求められます。サーブレシーブ、スパイク、ブロック、そして時にはセットアップ。バレーボールにおけるほぼ全てのプレーを高いレベルでこなすことが求められるOHは、チームのエースであり、優れた選手が「ミスター」と形容されるポジションなのです。

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※この記事は男子バレーを基準に書いています。
※バレー観戦初心者でもわかりやすいように「テンポ」や「ゾーン」などの用語は避けています。

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