バレーボールにおけるポジションごとの特性と役割 〜その1 セッター編〜

女子のワールドカップが開幕しました。会場で、テレビで観戦している人も多いと思います。

かつて女子が2回、男子が1回オリンピックで金メダルを獲得したこともあり、バレーボールは学校体育にも取り入れられたため、日本人にとってなじみ深い競技といえるでしょう。また、3回以内に相手に返し、ボールを落とした方が負けというシンプルでわかりやすいルールだけに、今でも人気のあるスポーツです。しかし、シンプルなだけに、そのポジションに関して深くは知られていないと思います。

この企画では、バレーボールにおけるポジションごとの特性を紹介していきます。第1回はセッター編です。

スパイカーが打ちやすいボールを“セット”する

「セッターって何をする人?」と聞かれたときに「トスを上げる人」と答える人がほとんどだと思います。もちろん間違いではありませんが、ただ単にトス(英語での直訳は投げる、ほおる)を上げればいいわけではありません。スパイカーが打ちやすいボールをセット(置く、据え付ける)することが重要です。バレーボール発祥の地アメリカでは「トスを上げる」という表現は使わずに「セットする」と言います。

では、どんなボールをセットするとスパイカーは打ちやすいのでしょう。当然、個々のスパイカーによって得意なボールは変わります。長さや高さ、ネットからの距離やスピードなどが微妙に違って、十人十色といえます。また、チームの戦術によって求められるトスの質も変わってきます。そうしたすべての要求に応えられるのがいいセッターです。

それらを実現するには、優れた技術力が欠かせません。オーバーパス、アンダーパスの基本的な技術はもちろん、ボールの下に早く入るための瞬発力、ボールの落下地点や自分がいる場所をいち早く把握する空間認識力、味方の位置や体制、相手ブロッカーのポジショニングや動きを察知する視野の広さなど、その力は多岐にわたります。

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今年度の男子代表の司令塔を担ってきた関田。柔らかく丁寧なトスで、スパイカーの個々の力を引き出す

 

試合を司る司令塔

もう1つ、セッターにとって大切な力は、状況に応じてより良いアタッカーを選択する力です。サーブレシーブをしてからセッターがボールに触るまでの時間は1.5秒前後。そのわずかな時間でボールの下に移動し、目視や選手の声かけにより、味方選手の状況や相手ブロッカーの動きを察知し、より得点が期待できる攻撃を選べるかどうかもいいセッターかどうかの判断材料になります。つまり、アメリカンフットボールのクォータバック、バスケットボールのポイントガードのように、司令塔としての役割を担っています。セッターがどの場面でどのスパイカーにトスを上げるかによって、試合の展開や情勢が左右されることが多く、とても重要なポジションといえます。

大型セッターが熱望されて久しい日本バレー界。大きなセッターがいれば相手スパイカーにブロックの上を抜かれることも少なく、サーブレシーブが大きくても手が届く範囲が広いというメリットがあるのは事実ですが、それと優れたセットができるということを天秤にかけた場合、後者の方が重要といえます。どんなに素晴らしいスパイカーが揃っていてもセッターの能力が低ければ勝てませんし、逆に特筆すべきスパイカーがいないチームでも、優れたセッターがいればいい試合をすることもできます。状況を瞬時に判断し、スパイカーがベストなパフォーマンスを発揮できるポイントにベストなタイミングでボールをセットする。それがセッターの役割だからです。自ら攻撃することはほとんどなく、目立ちにくいポジションですが、チームの核を担っているセッター。そこに注目して見るとバレーボールがもっとおもしろくなりますよ。

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トスアップの前にボールから目を切って相手ブロッカーを確認する藤井。スピード感のあるトス回しが持ち味

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