10月26日(金)の新Vリーグ開幕が迫る中、今季、サントリーサンバーズの新キャプテンとなった藤中謙也(入団3年目/25歳)がプロ宣言をした。
ユース、ジュニア時代から世代を代表する選手として活躍してきた。専修大学4年の2015シーズンに全日本に初選出。サントリーに入団当初から守備に定評のあるバランスのとれたアウトサイドヒッターとして注目され、入団1年目の2016/17V・プレミアリーグでは柳田将洋(ルビン)と対角を組んでチームを牽引。全日本に名を連ねる同期の山内晶大(パナソニック)、関田誠大(堺)らを押さえて最優秀新人賞に輝いた。しかし、2017年に始動した中垣内ジャパンには選出されず。その悔しさを同年のユニバーシアード大会にぶつけて銅メダル獲得に貢献した。その頃からプロとして活動することを考え始めたという。
全日本入りが目標。バレーボールに専念して自分を高めたい
「ユニバーシアードのレベルですけど海外のチームと対戦して視野が拓けたというか、世界の高さだったりパワーだったりを肌で感じて、もっとすごい選手が集まる海外のプロチームに興味をもちました。自分もそういう厳しさの中に身を置いて自分を高めたいという気持ちになり、まずはバレーに専念できる環境を作りたいと思ったのです。もちろんその先には全日本入り、そしてオリンピック出場という目標があってのことです」
決断の背景には、サントリーでプロ選手として活動していた酒井大祐コーチ(2018年5月に現役を引退)や、一足早くプロとなった柳田の影響が「少なからずあった」という。
「サントリーから東レに移籍した阿部(裕太)さんも含めて、その3人はバレーボールに対する情熱や意欲が違っていたというか、果敢に挑戦する姿に刺激を受けていたので、ユニバーシアード大会から帰国してまず相談したのは柳田さんでした」
経験者のアドバイスを受けて、チームには去年の10月頃から思いを伝え始めた。藤中の熱意と覚悟が荻野正二監督をはじめチーム関係者の心を徐々に動かし、認められた。栗原圭介チームディレクターは「チームとしては、(サントリーに根付いている)『やってみなはれ』の精神で選手の思いをかなえる方針。藤中はスキルだけでなく人間的にも申し分ない。オリンピックを見据えて成長を望んでいるので、精一杯、頑張ってほしい。引退後は指導者になりたいよう。いずれなんらかの形でサントリーに還元してくれれば一番いい」と話した。
プロ選手からプロの指導者となり、チームスタッフとして見守る酒井コーチも、「(自分がプロになりたいと思ったのは)野球小僧がプロ選手に憧れるのと一緒。プロの選択にはメリットもあればデメリットもある。バレーボールに専念できるが、生活の安定という意味では社員のほうが恵まれている。そういうことを理解した上で挑戦するのだから頑張ってほしい。自分も立場が変わって1年目。何ができるかわからないが対話を大切にしっかりやっていく」とエールを贈る。

自分を変えるきっかけを与えてくれたチームに感謝!
藤中が恵まれているのは、そうした話し合いが進められている中でもステップアップの機会が与えられていることだ。5月にサントリーの新キャプテンに就任。6月にはサントリーが立ち上げた、オフシーズンに主力選手を海外へ派遣し成長につなげるプロジェクトのメンバーとして、2ヶ月間、ブラジルに留学するチャンスを得た。
「ブラジルではプロの選手たちと一緒にプレーして熱量のすごさを感じました。僕もプロになる身としてそういう姿勢は見習っていきたいと思いました。また、海外の選手はその場その場でストレートにものを言います。時にはけんか腰じゃないですけど、激しく言い合う姿を見て、自分たちは『いいよ、いいよ』と流し気味になっていたところがあったなと反省しました。これからは自分がしっかりと考えを伝えていこうと思いました」
キャプテンになり「チームが勝つために何をすべきかを、より真剣に考えるようになった」という。
「リーダーシップの手本は昨年の酒井さんや一昨年の柳田さんです。同じチームでプレーしてきて(2人の)リーダーシップは秀でていると思いましたし、先輩に対しても自分の考えを伝えている2人の姿を見てきて見習いたいと思っていました。自分は自分の考えを伝えるほうではなかったので、キャプテンになったのを機に、今シーズンは意識してそれをやっていきたいと思っています。チームにとってプラスになることをして、それが結果に結びつけば自分も評価されると思うので、自分を変えていきたいと思っています」
サントリーサンバーズは、この春、大宅真樹(セッター/東亜大学出身)、喜入祥充(リベロ/早稲田大学出身)、秦 耕介(アウトサイド/筑波大学出身)、小野遥輝(ミドルブロッカー/東京学芸大学出身)、4人の新人を迎えて活気づいている。すべてのポジションに一人ずつ有望選手が加わり、「いいピースになりそうな気がしている」と藤中も期待を寄せる。
「Vリーグでは、上の選手たちは自分が特に言わなくてもやってくれると思うので、下の選手たちを上手く引っ張って、上と下をうまくつなげながら戦っていきたいと思います」

海外でプレーすることを視野にしっかりやっていきたい
コートでは、「いい意味で守備型というイメージを払拭したい」と意気込んでいる。
「(見ている人に)勝負どころで得点できる選手という印象をもってもらいたいので、そういう意味では守備型というイメージがなくなるくらい攻撃で活躍したいと思っています。ただ、チームではディフェンスの役割をもらっています。そこは譲れない部分ですし、そこが自分のアピールポイントであることは間違いないのでしっかりとやっていきたいです」
サントリーサンバーズの新Vリーグは10月26日(金)に大田区総合体育館で行われるJTサンダーズ戦から始まる。プロ転向の決断を受け入れてくれた両親を安心させるためにも、初戦から持ち味を発揮して存在感を示したいところだ。
「両親はいつも『自分で決めたことなら』と、否定せずに応援してくれるんです。今回も同じでした。多分心配する気持ちはあると思うんですけど、『頑張るよ』というのは伝えてあるので、安心してもらえるプレーがしたいですね」
自らの今後のステップアップのためにも、いずれ海外へ行くことも視野に入れている。
「何年後になるか分かりませんけど、全日本に必要とされる選手になってオリンピックに出ることを目指しているので、そういう道を歩めるように頑張ります」

◆2018/19 Vリーグ (V1)
10月26日(金) 19:30試合開始 ※BS−NHKで放送予定
藤中謙也
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