日本は第2戦のドミニカ共和国戦で会心の試合をし、ストレート勝ちして乗っていくかに思われたが、スロベニア、ベルギーと、相次いでヨーロッパ勢に敗れて1勝3敗。第1次ラウンドは残すところ1試合となった。

その時点で同じく1勝にとどまっていたアルゼンチンが、現地時間17日(月)にスロベニアに勝利したが、日本が第2次ラウンドに進出するためには、残されたアルゼンチン戦で勝たなければならない状況に変わりは無い。ただ、その条件がセットカウント3−1以内で3ポイントを獲らなければならないとより厳しい状況になった。しかし、選手たちは「自分たちのバレーをする」という原点に戻って調整を続けている。
日本が苦境に立たされたのは、フルメンバーで戦えなかったことが大きい。期待の新人、西田有志がケガで出遅れ、スタメン復帰を果たしたのは第4戦のベルギー戦からだった。第3戦のスロベニア戦で途中出場した西田は、「出るからにはやる、という気持ちと、自分で通用するのか、という気持ちが混ざってしまい、気持ちが決まっていなかった。ケガ明けというところで、自分の弱さが出てしまった。この経験を生かして、次の試合こそ思い切りプレーしたい」と話し、ベルギー戦の第1セットに素晴らしいパフォーマンスを見せたが、こうした一人ひとりのちょっとした不安がほころびとなってチームとしての自信を揺るがせていったことは否めない。

リベロの古賀太一郎は「ブロックシステムができていない。(相手が)Aパスを返した時にクイックにブロックにつくかを悩んだり、跳ぶべきところで跳べなかったり、ブロックに跳んでいるけれどレシーブとの関係ができていなかったり。そういうことが結構ある。それは(相手に惑わされているのではなく)自分たちの問題。ちょっとしたズレが連鎖して大きなズレになっている。なぜなのか…、そこでみんな悩んでいると思う」と明かした。

西田の快復を待っている間、日本はチームが目指す「速いバレー」を実現させるために、柳田将洋をオポジットに起用するというオプションを使った。柳田が「準備はしていたけれど、慣れないポジションなので、ミスが出ないよう心がけた」と話したように、そつなくこなしてチームを支えた。
選手たちは懸命に自分たちのバレーをするために思考を巡らし、やれることをやっている。相手の動きを見ながら、最善のプレーをしようと心がけている。日本バレーに希望をもたらしたコンビ攻撃の立役者、李博をケガで欠いたことが大きかったが、それをも乗り越えようと、柳田、福澤、古賀らが中心となって、当たり前のことを当たり前にするために必要なことを考え、対処しようとしている。
李とのコンビネーションに絶対の自信をもつセッター藤井は「李さんがいないのは痛手」と話しながらも、「代わりに出場する選手がいるので、また違うバレーができればいいと思う。みんな武器をもっている。その特徴を自分が把握して生かしていけるようにしなければいけない」と続けた。セッター関田とともに、ミドルとのコンビを中心に調整を図っている。

高橋健太郎のケガによりアジア競技大会から緊急参戦した小野寺太志や、これまでベンチを温めることが多かった伏見大和もスタメン出場を果たした。彼らも、チームのため、自分のためにできることを懸命にやっている。
「誰かの代わりでも、声をかけてもらった時に僕は行きたいと思った」という小野寺は、2年前に本誌の取材で「同期の石川、大竹と並んで試合に出ることが目標」と話していたが、世界選手権(ドミニカ共和国戦)という大舞台でその目標を果たした。「2人がどう思っているかわからないけど、僕はよかった。この大会だけでなく、この先もずっと続けていくことが大切なので、僕自身、もっとレベルアップしていきたい」と、新たな目標をもってアルゼンチン戦に臨む勢いだ。

伏見は、セッター藤井と大学時代の同級生で、卒業後も同じ東レアローズでプレーしている。207cmとチーム一の長身を誇り、大学入学時は藤井よりも伏見が全日本候補として注目されていたが、昨年の藤井の活躍に、「先に行かれてしまった」という気持ちを持っていたという。「なんとかして追いかけて、同じコートでプレーしたい。そういう思いをもって練習してきたので、藤井とこの舞台でスタートから一緒に戦えたということが素直に嬉しい。アルゼンチン戦はどういうメンバーになるかわからないが、僕が出た時には最後まで向かっていく気持ちを絶やさずにいく。勝ちをもぎ取るために必要な存在になれたらいい」と力強く語っている。
第1次予選最後の試合で自分たちのバレーをし、勝利を手にすることができるか。日本チームの底力に期待したい。
金子裕美