平成30年度全国高校総合体育大会(通称:インターハイ)「2018 彩る感動 東海総体」男子バレーボール競技大会が、三重県交通G スポーツの杜 伊勢体育館 他で、7月26日(木)〜30日(月)に行われ、尼崎市立尼崎高校(兵庫)が初の栄冠を手にした。
決勝の相手は高校界屈指のアウトサイド大塚達宣を擁する洛南。1月に行われた春高バレーでも決勝戦まで駒を進めて、優勝した鎮西の畑野久雄監督から「来年は勝てよ」とエールを送られた。いわば大本命のチームだったが、市立尼崎は少しもひるむことなく平常心で臨み、スタートから攻守で力を発揮した。

第1セットに続き、大接戦となった第2セットを35-33で奪うと、第3セット以降は追い込まれた洛南が地力を発揮。第3、第4セットを失い、流れは洛南に傾いたかに見えたが、第1セットのスタート同様、笑顔でファイナルセットのコートに立った市立尼崎は、宮城テリークの小気味いいスパイクで先制すると、6人全員が笑顔でコートを走り回り勢いづいた。

しかし洛南も負けてはいない。もう1人のエース垂水優芽がスパイクにサーブに力を発揮し、市立尼崎の独走を許さず。序盤から一進一退の攻防を繰り広げる展開となった。
洛南が大塚、垂水を中心に多彩な攻撃を仕掛けるが、市立尼崎はブロックでタッチを取り、そのボールを粘り強くつないでサイドの宮城、西村駿佑が攻撃する展開。両チームともにリベロとセッターの技量が高く、観客席の高校生からは「すげー」「うまい」といった声が数多くあがった。

21-20から洛南は大塚にボールを集めたが、市立尼崎のブロックを軸としたディフェンスは崩れず。守り抜いた末に西村が決めて、勝利を手にした。

【市立尼崎/藤原和典監督】
1月の春高でベスト8。悔しい思いをしたメンバーがだいぶ残っています。その子たちが日本一を合言葉に頑張ってきました。うちには全国大会の経験者やJOCのメンバーがいません。そういう子たちがそれぞれの得意を伸ばそうと、こつこつとバレーボールと向き合ってきたので、神様がちょっと勝たせてやろうかと思ってくれたのかなと思います。どのチームも素晴らしいので、たまたま勝たせてもらったということなんですが、ここまで支えてもらった中学校の先生や、仲間の高校の先生、大学の先生に感謝しなければいけないと思っています。日本一になり、これからは追われる立場になりますが、あえてそういうことは考えずに、もう一度チャレンジャーという気持ちでしっかりと練習に励んで、今回の結果が「まぐれだった」と言われないようなチームになれるよう頑張っていきたいと思います。

【市立尼崎/安井恒介主将】
新チームになってから、全国優勝を目指して1日1日の練習を無駄なく取り組んできたので、その成果が出たと思います。(優勝した瞬間は)頭が真っ白になって実感がなかったのですが、表彰式で喜びを実感できました。(選手主体の練習で)ぶつかり合うことも多く、まとめるのが大変でしたが、同級生12名に支えられてここまでくることができました。人々に感動を与えられるチームをつくろうと頑張ってきたので、今回はそれができたのではないかと思います。

【市立尼崎/宮城テリーク】
第5セットに入る前は「まだ1セットある。まずは深呼吸して落ち着いて、1点1点魂を込めて拾ってつなげて打って1点取って勝利をつかもう」ということを話していました。みんな落ち着いていたのでよかったと思います。自分たちは公立中学校出身者が集まって、上を目指して一生懸命練習し、這い上がってきたチーム。自分たちが洛南を倒すとは誰も思っていなかったと思います。(優勝は)言葉にできないほど嬉しいです。監督や仲間に感謝しています。

【洛南/大塚達宣】
優勝候補と言われながらも、実際に優勝したことがないので、自分たちは常にチャレンジャーという気持ちで試合に臨もうと話してきました。ただ、駿台学園さんとの試合でも相手に先行されました。去年のチームもそうでしたがスロースターターなので、そこは直していかなければいけないところだと思います。相手が勢いよく攻めてきた時に、そこで守りに入るのではなくて、自分たちがさらに強い力で攻め返すことができないと全国優勝には届かないと思います。また、最後は自分に上がってくるとわかっていながらも、決めきれずに負けてしまいました。決めなければ、という焦りがあって、ただ、コースに打つだけになってしまったので、ブロックを利用するなど、気持ちに余裕をもってプレーできるようにしなければいけないし、そのためにも引き出しをもっと増やしていかなければいけないと思います。

3位は鎮西と駿台学園
鎮西は6月から7月にかけて行われたアジアユースでキャプテンを務めた水町泰杜が存在感を示した。決勝トーナメントでは、その時にコーチを務めた竹内裕幸監督率いる星城と、朝長孝介監督率いる大村工が対戦。勝ち上がったチームが鎮西と対戦するという皮肉な顔合わせとなったが、水町を擁する鎮西がその山を抜けて、準決勝で市立尼崎と対戦した。しかし市立尼崎の粘り強い守りに屈し、試合後は悔し涙が止まらなかった水町だったが、表彰式では晴れやかな表情を見せていた。
駿台学園は2年生主体のチーム。関東大会ではベスト8と振るわなかったが、しっかりとチームを立て直し、準決勝でも梅川大介監督が「強化してきた」と話すサーブとブロックで洛南を苦しめた。3位は大きな自信になったに違いない。
【鎮西/水町泰杜】
このチームで臨む最後のインターハイだから、1点でも長くコートに立っていたいという気持ちで戦いました。周りは頑張ってくれた。勝負どころの1点が取りきれなかった。(敗因は)自分の実力不足だと思います。(春高までに)筋力アップと、勝負どころで決めきることができるメンタル面を強化しなければいけないと思いました。チームとしては、ちょっとした気の弛みで流れが変わってしまったので、そういうことをなくすというのが勉強できました。目標としていたベスト4までみんなの力で来ることができたので、もう一度、一からチームを作って、(国体、春高では)さらに上に行けるようにしたいと思います。

【駿台学園/梅川大介監督】
今大会の洛南は、1セット目の戦いが不安定だったので、(そこをついて)先行しないと勝機はないと思っていました。第2セット序盤まではブロックが機能し、うまくいっていましたが、ギアが入ると(洛南のほうが)実力は上。セッターの上を冷静に打ち抜いてきて、リードしたところからクイックを仕掛けられ、ブロックが惑わされてしまいました。(ここまで戦うことができて)よく頑張ったと思います。(今大会を振り返ると)西原戦の第2セット、23-23からお見合いで失点し、セットポイントを握られました。これまではそういう場面で崩れることがあったのですが、31-29でセットを取ることができました。苦しい試合展開でもひっくり返せる力がついてきたのかなと思っています。(春高に向けては)弱点であるサイドを育てることと、この大会で悔しい思いをしている2年生の成長に期待し、体づくりから頑張っていこうと思っています。

【戦績】
優 勝 尼崎市立尼崎高校(兵庫)
準優勝 洛南(京都)
3 位 鎮西(熊本)・駿台学園(東京)
ベスト8 東福岡(福岡)・高川学園(山口)・清風(大阪)・愛工大名電(愛知)
ベスト16 日本航空(山梨)・習志野(千葉)・都城工(宮崎)・東亜学園(東京)・埼玉栄(埼玉)・西原(沖縄)・新田(愛媛)・崇徳(広島)



【ベスト6】

安井恒介(市立尼崎/3年/ミドルブロッカー/188cm)岩本大吾(市立尼崎/3年/ミドルブロッカー/191cm)大塚達宣(洛南/3年/アウトサイド/193cm)山本 龍(洛南/3年/セッター/186cm)水町泰杜(洛南/2年/アウトサイド/181cm)染野 輝(駿台学園/2年/アウトサイド/182cm)
【優秀選手】
砂川裕次郎(埼玉栄/2年)
鈴木 歩(習志野/3年)
染野 輝(駿台学園/2年)
伊藤吏玖(駿台学園/2年)
山﨑 仁(駿台学園/2年)
武藤 茂(東亜学園/3年)
小林桜太(日本航空/3年)
岡野恵大(愛工大名電/3年)
藤巻 睦(愛工大名電/3年)
米倉友哉(松阪工/2年)
大塚達宣(洛南/3年)
垂水優芽(洛南/3年)
山本 龍(洛南/3年)
西川馨太郎(清風/3年)
古藤宏規(清風/3年)
安井恒介(市立尼崎/3年)
宮城テリーク(市立尼崎/3年)
岩本大吾(市立尼崎/3年)
柴田修杜(市立尼崎/3年)
阿羅田忠勝(崇徳/3年)
山田亜藍(高川学園/3年)
持田恒希(高川学園/3年)
後藤陸翔(新田/2年)
廣田大騎(東福岡/2年)
柳北悠李(東福岡/1年)
水町泰杜(鎮西/2年)
森 北斗(鎮西/3年)
谷 武珍(鎮西/2年)
黒木奨輝(都城工/2年)
茂田隆次郎(西原/3年)
【リベロ優秀選手】
山内智貴(市立尼崎/3年)
荒尾怜音(鎮西/2年)