東日本インカレで見えた、今季前半の大学模様

大学生は前期試験まっただ中というこの時期。多くの強豪チームはその後しばらくの解散(学校、チームから離れて自由な時期。帰省する選手も多い)を経て夏の強化合宿に入る。独自でトレーニングキャンプを張るチームもあるが、8月にはVリーグチームの本拠地で合宿をさせてもらいながら、練習ゲームなどを通じて強化を図っていく。いくつものVリーグチームを渡り歩きながら3週間前後に及ぶこともある。この夏の強化合宿で選手個々の力もチーム力も大きく成長する。そして夏が終わればいよいよ後半の戦いが始まる。秋季リーグを経て大学バレー最大のイベント、全日本インカレへと向かっていくのだ。

6月21日(木)から4日間にわたり行われた2018東日本インカレは、ベスト8に関東1部春季リーグ戦の上位8チーム(早稲田 筑波 中央 順天堂 日体 明治 東海 慶応義塾)が順当に勝ち上がり、大いに盛り上がった。
結果は、関東大学春季リーグ戦で全勝優勝を遂げた早稲田大(第1シード)が、この大会のディフェンディングチャンピオン、中央大(第3シード)を3−1で破り、今季2冠を達成した。3位決定戦では、今大会、個の力がうまくかみ合った明治大(春季リーグ戦6位)が、日本体育大(春季リーグ戦5位)をフルセットの末に下して銅メダルを手にした。

東日本インカレの戦いを通して、今季前半の大学模様をレポートする。

 

チーム力で筑波大を圧倒した明治大

毎年、春季リーグ戦が終わると教員免許取得を目指す4年生が教育実習で3週間あまりチームを離れる。チームづくりやコンディションの調整に苦労しながら大会に臨むチームもある中で、春季リーグ戦での課題を修正し、持ち味を発揮したのが明治大だった。
準々決勝では第2シードの筑波大に圧勝。準決勝では勝利こそものにできなかったが、終始優位に立って第3シードの中央大を苦しめた。最終日の3位決定戦では、大学界屈指のハードヒッター高梨健太(4年/オポジット/山形城北高卒/主将)率いる日体大を相手に一歩も譲らず。フルセットの末に勝利をものにし、3位を手にした。
この春から指揮をとる鈴木康時監督は、「サーブの強化が実り、サーブミスで流れを切ることが少なかった。うちはサイドが小さいので、レシーブでつないでリズムをつくらなければいけない。この大会では小川智大(4年/リベロ/川崎橘高卒/主将)を軸にそれもできた」と、手応えを感じていた。オポジット池田颯太(2年/創造学園高卒)、サイド小松一哉(3年/雄物川高卒)、ミドル三輪大将(1年/高川学園高卒)らを、トリッキーなトスワークが持ち味のセッター上林直澄(2年/東亜学園高卒)が操る創造的なバレーが定着しつつあり、シーズン後半も上位を脅かす存在になりそうだ。

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明治大の小さな大黒柱・小川主将。4月に監督が替わり不安定だったチームを声でもプレーでも引っ張り、東日本インカレで銅メダルを獲得した

 

その明治大に、準々決勝で敗れた筑波大の秋山央(なかば)監督は、「練習では気づかなかったが、(4年生が教育実習で抜けていたこともあり)連携ができていなかった。チームの状態を見誤っていた。この結果は監督に責任がある」と悔いた。

1回戦から苦戦を強いられ、なんとか勝ち上がったものの、2日目に攻守でチームを支えるサイド坂下純也(2年/駿台学園高卒)がケガでリタイア。準々決勝の明治大戦では、生命線であるセッター酒井啓輔(4年/浜松商高卒)とミドル樋口裕希(4年/高崎高卒/主将)のコンビが機能せず。サイド小澤宙輝(3年/甲府工高卒/全日本メンバー)、オポジット吉田綜眞(3年/福井工大附福井高卒)の攻撃力に頼らざるを得なかった。ケガのため、春季リーグ戦ではベンチを温めてきたミドル田城広光(4年/とわの森三愛高卒)が躍動。小気味いいプレーで終盤チームをもり立てたが、流れを変えるには至らなかった。

「選手たちは苦境の中でも自分たちのバレーをしようと最後まであきらめない姿を見せてくれた。それは収穫だった。全日本インカレを見据えてチームを作り直す」と秋山監督。知将のもとでどのようにチームが変わるのか、注目したい。

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司令塔である酒井が勇気を持って樋口(背番号1)を生かすトス回しができるか、真価が問われる

 

高梨が本来の力を発揮!存在感を発揮した日体大

もつれる試合が多い中で、準々決勝(対順天堂大)を唯一ストレート勝ちで抜けた日本体育大は、高梨が切り札の攻撃的なバレーが復活。準決勝では早稲田大を、3位決定戦では明治大を大いに苦しめた。
山本健之監督は選手の将来を考え、高梨をサイドに起用するチームづくりに取り組んできた。196cmの長身セッター道井淳平(3年/石川県工高卒)も、以前から「3年になったらコートに立たせたい」と公言。同期のセッター河東祐大(3年/鹿児島商高卒)と競わせて今年の春季リーグ戦からチームの軸に据えたが、主力の一人、仲本賢優(3年/西原高卒)をケガで欠いたこともあり、春季リーグでは日体大らしさを発揮できずに終わっていた。
トーナメントで競う今大会は高梨をオポジットに戻し、セッターには河東を起用。サイドの仲本と西村信(2年/高川学園高卒)が攻守で支えるチーム構成で臨んできた。準決勝、3位決定戦ともに勝利まであと一歩のところまで相手を追い込みながらも勝ち切ることができなかったのは課題だが、高梨のベストスコアラー賞受賞は自分の仕事ができた証。高梨にサーブが回ってきた時に、前衛に上がる河東に代えて長身の道井を投入。その道井がブロックを決めるなど戦術もはまっていた。2mのミドル山本翔也(1年/小松大谷高卒)も持ち味を発揮しており、チームとして自信をつかんだ大会になったに違いない。秋季リーグ戦は再び育成重視のチーム構成で臨むかもしれないが、全日本インカレに向けて勝てるパターンを1つもてたことは大きい。

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近い将来に日の丸を付けることを目標としている高梨は、アウトサイドヒッターへの転向を望んでいるが、今年前半の日体大ではうまく機能しなかった。秋季リーグの開幕戦が楽しみだ

 

準優勝の中央大は、選手層の厚さが強み

準々決勝では東海大に、準決勝では明治大に苦戦しながらも、勝利をものにし決勝に進んだ中央大は、14名全員がスタメンを担える層の厚さが強みだ。
松永理生元監督(現チームアドバイザー)の任期満了に伴い、この春、バトンを受け継いだ豊田昇平監督は、春季リーグ戦の序盤こそ慎重に戦っていたが、黒鷲旗を機に平井海成(2年/祐誠高卒/ミドル)、中野竜(2年/創造学園高卒/サイド)、鍬田憲伸(1年/鎮西高卒/サイド)、山岸隼(1年/東山高卒/セッター)ら下級生を積極的にコートに送り出し、いい競争意識が生まれている。3年生のスタメン、サイド富田将馬(東山高卒)、セッター牧山祐介(洛南高卒)、ミドル水野将司(愛知工業大名電高卒)も、うかうかしていられない状況だ。
それができるのも、献身的なプレーでチームを支える主将の柳田貴洋(4年/東洋高卒/リベロ)、ゲームキャプテン谷口渉(4年/東福岡高卒/ライト)の存在が大きい。今大会ではレセプションからサイド都築仁(2年/星城高卒/全日本メンバー)を外し、谷口を入れる戦術がはまった。都築が「負担が減って攻撃に専念できた」と言うように、今大会ではエースらしい攻撃が随所に見られた。都築とともにスタメンの一角をものにしているミドル梅本鈴太郎(2年/鎮西学院高卒)も強気なプレーで攻め立て、スパイク賞を受賞した。その時に調子のいい選手を使えるチームになりつつあり、豊田監督の采配から目が離せない。

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下級生が多いチームの中で、しっかりと軸をなす柳田主将。昨年までとは大幅にメンバーが変わりながらも、優勝争いに絡んでいる

 

セットを落としても負けない、早稲田大が頂点に

勢いのある中央大を下して頂点に立った早稲田大だが、今大会は準々決勝以降、毎試合セットを落とすゲーム展開を強いられ、苦しみながらつかんだ優勝だった。大会直前までチームの主軸であるサイド藤中優斗(4年/宇部商高卒/主将)、セッター小林光輝(4年/創造学園高卒)が教育実習でチームを離れていた。同じ境遇でこの大会に臨んだ筑波大の秋山監督が、「練習ではいつも通りにできているように見えても、さまざまなストレスがかかる試合ではほころびが出る」と話していたが、早稲田大も同様だった。
「武藤鉄也(3年/東亜学園高卒/ミドル)を中心に練習を進めてきたが、4年生の主力で一人チームに残っていた鵜野(幸也/早稲田実業高卒/サイド)が責任を感じて背負いすぎてしまった。宮浦(健人/2年/鎮西高卒/オポジット)にも滅多にないミスが出た」と松井泰二監督(早稲田大)。藤中も「指導案の作成に追われて、母校で実習していながら、ほとんどバレーができなかった。コンディションが悪く、チームに迷惑をかけた」と、優勝しても反省しきりだったが、心身の微妙な変化でズレが生じても負けないところが今季の早稲田のすごいところだ。
セットを落としても立て直しがきく。連続してセットを落とさない。セット間に監督が「良さが出てないよ」「データはこうなってるよ」「いつもやっていることを出そうよ」……、そう声をかけると、選手がやるべきことを考えられる。早稲田のバレースタイルを一人ひとりが理解し、表現できる強みが苦しい場面でチームを支えた。
今大会、随所でチームをもり立てたリリーフサーバー宮下諒大(4年/早稲田実業高卒)とミドル村山豪(2年/駿台学園高卒/ブロック賞を受賞)は、いずれも「手を抜かずに練習する選手」と監督が太鼓判を押す。「目標は4冠ではない。毎日の練習をしっかりやって試合でその力を発揮すること。それができれば結果はついて来る」という松井監督の信念を、改めて実感させられた大会だった。

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常に真剣に練習に取り組み、自分自身を分析する能力も高い村山。2年生ながらチームの中心選手だ

 

その早稲田を倒すチームは現れるのか。次のステージは9月に開幕する秋季リーグ戦だ。ここに来てチーム力を向上させている大学が多く、混戦が予想されるだけに楽しみだ。

7月6日(金)にU−18日本代表がアジアユースで連覇を果たし、2019世界ユースの出場権を手にしたが、この後、大学1年生を中心に構成されるU−20(早生まれの大学2年生以下)がアジアジュニアに、8月には大学4年生を中心に構成されるユニバーシアードチームがアジアカップに挑む。日の丸を背負う選手たちの多くは関東大学1部リーグのチームに所属しており、国際大会でつかんだマインドやスキルを見られるのも秋季リーグ戦の醍醐味だ。

(文/金子裕美)

 

【最終結果】
優勝 早稲田大学
2位 中央大学
3位 明治大学
4位 日本体育大学
5位 順天堂大学・筑波大学・東海大学・慶應義塾大学

【個人賞】
優秀選手賞 藤中優斗(早稲田大4年)
敢闘選手賞 柳田貴洋(中央大4年)
ベストスコアラー賞 高梨健太(日本体育大4年)
スパイク賞 梅本鈴太郎(中央大2年)
ブロック賞 村山 豪(早稲田大2年)
サーブ賞  池田颯太(明治大2年)
レシーブ賞 藤中優斗(早稲田大4年)
セッター賞 小林光輝(早稲田大4年)
リベロ賞  小川智大(明治大4年)
優秀監督賞 松井泰二(早稲田大)

 

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