「JVAカップ 兼 日本代表チーム選考大会」レポート
4年に1度開催されるアジア競技大会の出場権利を争う「JVAカップ 兼 アジア競技大会 日本代表チーム選考大会」が4月28日(土)、29日(日)、東京都大田区の大森東水辺スポーツ広場ビーチバレー場で開催された。
2018年に開催されるアジア競技大会ビーチバレーボール競技は8月19日からインドネシアのパレンバンで行われる。その代表選考会となる今大会では男子12チーム、女子9チームが出場し、一度負ければ終わり、というシングルトーナメント戦で行われた。
越川vs石島対決の行方
この開幕早々のビッグトーナメントで、昨シーズン転向した越川優(横浜メディカルグループ)と石島雄介(トヨタ自動車)が2回戦で激突することになった。越川は今シーズンからインドア代表リベロの実績を持つ西村晃一(WINDS)、石島は若手の高橋巧(了徳寺大学(教員))とそれぞれペアを結成。この冬、石島はブラジル、越川はアメリカに渡り、プロコーチにみっちり指導を受けた2人は、自らの成長を証明するべく、この大会に挑んだ。
多くの観衆の視線が集まった越川と石島の対決。序盤、西村/越川組がリードを奪う展開に。しかし、徐々に固さの取れた石島/高橋組は、ネット際で石島が存在感を発揮し、ゲームを支配し始める。越川は、「合宿していたロサンゼルスの砂に比べて、会場の砂は重くて滑りやすかった。砂の状況に合わせることができず、ジャンプができなかった。セット(トスアップ)に行く時、反応が遅くなり、固まらない状況で上げてミスにつながってしまった」。石島/高橋組は、なかなか決定打を決められない西村/越川組に対し逆転に成功。21-18と第1セットを先取した。
第2セットも、石島/高橋組のペースは変わらない。石島の幅広いブロックを盾にし、レシーバーの高橋がコンスタントにディグを成功させて得点を重ねていく。「環境に慣れることができず、今のチームの課題があからさまに出てしまった」と西村が振り返るように、西村/越川組の攻撃は石島/高橋組の守備をなかなか崩すことができない。
石島/高橋組は最後まで主導権を握って離さず、21-14でストレート勝利を収めた。
石島/高橋組は、準決勝へ進出。西村/越川組は、「負けは負け。この結果を受け止めたい。アジア競技大会に出場するチャンスはなくなったけど、まだまだやらないことあるのでそれを一つ一つやっていくことが先につながっていく」と、前向きにコメントした。
ハイレベルな空中戦を展開
西村/越川組に勝利した石島/高橋組は、準決勝で上場雄也(松戸レガロ)/白鳥勝浩(トヨタ自動車)と対戦。白鳥は過去2度、オリンピックに出場したことのある現役唯一のオリンピアン。上場は2010年アジア競技大会でインドア代表として出場し、金メダルを獲得した実績がある。その後、上場は2013年にビーチバレーボールに転向し、4年前のアジア競技大会にも出場した。そんな経験値の高い白鳥/上場組と、目下成長中の石島/高橋組がどんな戦いを見せるのか、注目を浴びた一戦となった。
試合序盤から上場、石島のハイレベルな空中戦が繰り広げられる。ビーチバレーボールはたった2人でコートを守る競技。インドアに比べて空いているスペースがあり、一見ボールを落としやすいと思われがちだが、風でボールが揺れ、不安定な砂の上での攻撃は、これが実に難しい。さらにネット際に大型のブロッカーがそびえ立てば、レシーバーの守備範囲もかなり絞られる。アタッカーは目に見えない包囲網を打ち破らなければ、というプレッシャーがのしかかる。そんな心理的状況の中、強打を決められるか、決められないかが、勝負の命運を分けることになる。
このゲームでも、両チームはディフェンスを崩すべく、風を引き裂くような強烈な強打を打ちこんでいく。それに対し、ブロッカーの上場、石島の強烈なシャットアウトも飛び出し、レシーバーの白鳥、高橋も次々にディグを成功させる。そんな男子ならではの迫力あるプレーに、会場のボルテージは高まっていく。デュースにもつれ込む接戦となった第1セットは、最後に上場のサーブポイントが決まり、白鳥/上場組が23-21と制した。
第2セットも両者一歩も譲らない。白鳥/上場組がリードを奪っても、石島がブロックポイントを決め、必死に食らついていく。終盤、白鳥のストレートスパイクを石島がブロックフェイク(ブロックに飛ぶふりをして、スパイカーがボールを見ている隙に下がってレシーブするプレー)で拾い、高橋も白鳥のストレート攻撃に対してディグを成功。この石島/高橋組の堅いディフェンスは勝負所でベテラン・白鳥の攻撃ミスも誘い、流れを掴みかける。しかし、終盤において高橋が痛い攻撃ミスが響き、白鳥/上場組が21-19と決着をつけた。
成長を遂げている石島の期待値
準決勝で敗退した石島/高橋組は、村上/畑辺組に勝利し3位。アジア競技大会の内定権利はとることができなかったが、石島は「今大会は全体的に非常に高いパフォーマンスを発揮することができた」と、自らのプレーに及第点をつけた。対戦した上場も「石島は成長のスピードが速い。元々ブロックのうまい選手だったが、ブラジル合宿を経てさらに巧くなって帰ってきた。いい刺激を受けている」と語った。
日本代表組としてブラジルで2ヵ月間、過ごしてきた石島と高橋のコンビネーションは、どのチームに対しても大崩れすることはなかった。石島/高橋組の試合を見ていたあるコーチは、石島のプレーについて「世界に通用するブロックだと思う。朝日健太郎(元日本代表、現参議院議員)以上のブロッカーになるかもしれない」と述べた。
その魅力は、ブロックの幅と空中でのボディバランス。着地後、すぐに動けるアジリティの強さも大きな武器だろう。そんな石島の後ろで構えている高橋にもどこか余裕を感じる。「試合中、石島さんの奇想天外な戦術の発想が機能している。自分が悪い時でも支えてくれるし、石島さんが悪い時は自分が支えるというバランスも整っていると思う」と、好発進の要因を述べた。
今後、さらなる進化が期待される未完の大器・石島。「勝負所で攻撃の押しが弱く、拾われてしまって点がとれず、2、3点行かれてしまったのが課題だった。まだまだ伸びしろがあると思うので、高橋と一緒に東京オリンピックを目指してがんばっていきたい」と、意気込みを語った。
次なる戦いは、5月3日(木・祝)から東京都港区お台場ビーチで開催される「マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2018第2戦東京大会」。越川はアメリカ・ロサンゼルスで開催されるワールドツアーに出場するため不在だが、石島は悲願の初優勝に向け、挑むことになる。
ビーチバレーボール情報はJVAビーチバレーボール特設サイトへ。
取材・文/吉田亜衣(BeachVolleyballStyle)