2017/18V・プレミアリーグ 優勝はパナソニック「チーム一丸でもぎとったV」

パナソニック1勝で迎えたファイナル第2戦。パナソニックパンサーズ対豊田合成トレフェルサの試合が3月18日(日)、東京体育館で行われた。今シーズン最後の試合にふさわしく、フルセットの大熱戦の末にパナソニックが勝利し、4年ぶり5度目の優勝を遂げた。ファイナル6で全治12ヶ月のケガをした清水邦広(パナソニック)も会場に駆けつけて、チームメイトのプレーを見守り、優勝の喜びをかみ締めた。

試合後、キャプテンの深津英臣をはじめパナソニックの選手たちが「厳しい試合だった」と口を揃えたように、勝つことが絶対条件の豊田合成がスタートから攻めの姿勢を貫き、セットを先行する展開となった。

この日も豊田合成のポイントゲッター、イゴール・オムルチェンはベンチ入りできなかったが、そのポジション(オポジット)に入った山田脩造がポテンシャルを発揮。前田一誠のトスワークも冴えて的を絞らせない。さらに傳田亮太のサービスエースや近裕崇、高松卓矢のブロックポイントなどで得点を重ねて、第1セットは難なく豊田合成が先取した。

ファイナル3をゴールデンセットで勝ち上がった豊田合成が、幸先のいいスタートを切ったことで、会場のボルテージは一気に上がった。その中で、第2セットはパナソニックが本来の力を発揮した。ミハウ・クビアクが、福澤達哉とともに力強くチームを牽引。パイプ攻撃でノーブロックの状態を作るなど、深津のトスの組み立てにも余裕が生まれて豊田合成につけ入るすきを与えない。第2セットはパナソニックが奪ってセットカウントをタイに戻した。

仕切り直しとなった第3セットはスタートから一進一退の攻防となった。均衡を破ったのはパナソニックだった。8-8から深津のサーブで相手を揺さぶり、攻撃が単調になったところを福澤や今村貴彦がブロックで仕留める。攻撃チャンスもしっかりものにし、パナソニックが5連続得点をあげた。流れをつかんだかに見えたが、豊田合成のトミー・ティリカイネン監督は山田に代えて椿山竜介を、近に代えて山近哲を投入。このメンバーチェンジが流れを変えた。椿山が思いきりのいいスパイクを決めてコートを走り回る。山近も打数こそ少ないが確実に速攻を決めてチームに貢献した。白岩のサービスエースで同点(21-21)に追いつくと、高松が気迫のこもった攻撃を連発。4得点をあげて豊田合成がこのセットを取り、セットカウントを2-1とした。

勝負がかかった第4セット。豊田合成はキャプテンの古賀幸一郎(リベロ)やエース高松が「なんとしても勝つ」という気迫をみなぎらせてプレーし、チームを鼓舞した。一方、パナソニックは「第3セット終盤から足がつっていた」という福澤に代えて久原翼を投入。「誰が出ても戦えるチームづくりをめざしてきた」という川村監督は、レギュラーラウンドから折りをみて久原を起用してきたが、オポジットとアウトサイド、2つのポジションで久原がチームを支えた。クビアクも攻撃だけでなく、守備やつなぎ、トスアップにも積極的に動いた。セット終盤まで両チームともに一歩も引かず、点差がつかない状況の中で、豊田合成は守備型のアウトサイド白岩に代えて、攻撃型の山田を投入し勝負に出た。するとパナソニックはサーブで山田を狙いプレッシャーをかけるが、山田は意地を見せた。クビアクの強打でパナソニックが先にセットポイントを握ったが、山田も負けじと応酬し、デュースに持ち込んだ。25点目を巡っては、深津が今村にトスを集中。2本決まらず、3本目は今村以外の選択肢もあったが、もう1本今村へ。その期待に応えて、パナソニックは再びセットポイントを握った。最後はクビアクが豊田合成のマークを交わして26-24。勝負はファイナルセットに持ち込まれた。

会場には、駿台学園高校や中央大学、日本体育大学など、複数の学生チームが観戦に訪れていた。チーム力で勝負する両チームのプレーを生で見て、何かを感じ取ったに違いない。

第5セット、パナソニックは今村に代えて久原をオポジットに起用。大学時代のチームメイト井上航(JT)によると「飄々としているが、実は勝負に熱い男」という久原が、優勝をかけた最後のセットでもいい働きをした。「(ベンチでは)第5セットのコートに立つことだけを考えていた」という福澤とともに、スタートから点を稼いで6-3とリードを広げた。15点マッチでの3点差は大きい。豊田合成はこれまでにも増して全員で守り、つないで、攻撃を仕掛けたが逆転には至らず。12-10の場面で高松にサーブが回ってきた。「このまま終わらせてたまるか」という魂の込もったサーブはラインアウトの判定を受けたが、チャレンジシステムで一転エースに。会場がどよめく中、パナソニックはタイムアウトを取って間を作ったが、タイム明けの2本目も高松は渾身のサーブを放ってエースを奪い、12-12と追いついた。しかし、3本目のサーブが痛恨のミス。1点リードでサーブ権を得たパナソニックは、深津に代えて池田政之をワンポイントブロッカーとして投入した。その池田が、クビアクのトスを打ち込み、マッチポイントを奪った。豊田合成は高松の攻撃で1点を加えたが、デュースに持ち込むことはできず。福澤がウイニングポイントを決めて、パナソニックが勝利した。

20180323_3
イゴール頼みではないことを証明して見せた豊田合成。古賀キャプテンをはじめ、多くの選手が晴れやかな表情で銀メダルを受け取った。

どちらが勝ってもおかしくない試合だった。豊田合成の傳田は「悔しい思いはあるが、チームとして一つになれた。最後にいいゲームができた」と振り返った。キャプテン古賀も「よくやったと思う。(個々の)足りないところを補い合いながら、いいチームになれた」と今シーズンを評価した。

豊田合成は「イゴールの得点力があってこそのチーム」と評されることが多いが、チームとしての約束事を全選手が理解し、それを表現できる組織力が3年連蔵ファイナル進出、4年連続3位以上という輝かしい実績を支えている。「プレー機会は平等ではないが、(豊田合成のめざすバレーを)全員ができる。(私は)いつもそれを見ている」とトミー監督が話したように、椿山、山近、黒澤雄介らがファイナルの舞台に起用されたのは苦肉の策ではない。日々の練習の賜物であり、イゴール不在の試合で、改めて豊田合成の底力を証明して見せた。

悲願の優勝を遂げたパナソニックは、V・プレミアチームの中でもっともメンバーが充実している。福澤が「今シーズンはいい練習ができていた。若手が成長し、競争できた」と振り返ったように、若手選手だけでチームを組んでも勝負できる力がある。しかし、川村監督は安易に若手を起用しなかった。ケガでクビアク、清水を欠き、5位となった昨シーズンの経験を踏まえて「誰が出ても戦えるチームづくり」をめざしながらも、ベテランの清水、福澤、永野健を軸としたチームでレギュラーラウンドを圧勝し、ファイナル6に進んだ。

20180323_2
MVPに輝いたクビアク。

清水のアクシデントによりチームの修正を余儀なくされる中で難しかったのは、技術的な問題よりも精神的な問題であろう。コート上での信頼関係は一朝一夕にできるものではない。「難しい状況だったが、みんなを信じて戦うことができた」とクビアクが話したように、これまでベンチを温めてきた選手を含めて一つになって戦い、目標を達成したことには大きな意味がある。今回の優勝をステップに、さらなる進化を遂げるであろうパナソニックの来シーズンに注目したい。

(文/金子裕美)

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。